日本の製造業メーカーの国際競争力が低下する原因として、「日本企業は手広くいろいろな事業を展開し、伸びる事業に集約できていない」という主張をよく見かける。果たしてそれは本当だろうか?
当時と状況が異なるとは言え、日本企業がかつて得意とし、事業として切り離していった半導体やスマートフォン、デジタル機器、家電は世界中に広がって需要は好調。日本にとっては「逃した魚」状態になっている。事業を集約するというのは目先の市場では聞こえはいいが、みすみす成長産業を逃すことにはならないか。日本の企業に必要なのは、手放すという安易な選択ではなく、伸ばして稼ぐこと。無責任に聞こえたら申し訳ないが、本質はそうだ 。
いま世界中でM&Aが活況だ。M&Aは、自社に必要な製品や技術、ネットワークを買収という形で手に入れ、自社を強くすること。もちろん自社の立ち位置がきちんと定まっていることが大前提だが、手放すのではなく、手に入れるのが現在のトレンドとなっている。GAFAMをはじめ、シーメンスやABB、シュナイダーエレクトリック、ロックウェルオートメーションといったFA領域の主要プレイヤーたちも、M&Aを積極的に進め、必要なものを取り込むことで強くなり、時代の変化にビジネスを合わせていった。日本でよく言われるような集約・集中とは真逆の発想だ 。
今とこれからの日本の製造業に必要なのは「融合」して強くなることだ。不要なものは集約、切り離す一方で、必要なものは外部から取り込む。そして既存事業と融合させてシナジーを生む。これを行うことが競争力の強化につながる。中小企業の場合は、いまは独立経営を続けながらも、自社の強さや長所を生かせるグループに入ることも将来的な選択肢に入れておく。
大企業のリソースをうまく使うことで、これまで難しかったこと、できなかったこともできるようになる。先日のIIFESでの日立製作所が好例だ。2019年からM&Aでグループに参画したFA企業の技術と、自社の技術を融合したデモラインを初めて披露し、次の日立グループが取り組む戦略を明確にした。それと同時に、そのための新会社「日立オートメーション」の設立も発表した。日立グループの、取り込んで、融合させ、集約して、強くなる。この動きには注目だ。