IoTの普及により現場の見える化や装置の稼働状況の可視化を行っている企業が増えている。大企業では実証実験から本稼働に入り、中小製造業でも様子見から検討、採用が増えてきている。その中心となっているのは主に製造装置や生産ラインといった「ものの見える化」だが、ここに来て「人の見える化」にも関心が高まっている。スマートウオッチなどウェアラブル端末のセンサーや監視カメラの映像を使い、人の作業状況や体調といった状態をデータ化して管理する。
こうした類いの製品やソリューションは以前から存在したが、ここに来て製品・サービスが増え、快適性や安全性を高めた実績例も目立ちはじめた 。
その一方で、こうした人の可視化に対して現場作業員からは「自分たちはどこまで管理されるのか」「そんなデータを取られていたらトイレにもいけない」など警戒する声も出てきている。仕事中とは言え、常に誰かに見られているのは気持ちの良いものではない。視線や管理が気になって仕事に集中できないという主張があるのも、もっともな話しだ。人の気持ちは、画一的にそう簡単に解決できるものでもない。だから難しい 。
では人の動きの可視化を成功させるためにはどうすれば良いのだろうか? 答えはひとつ。管理者が「寛容さ」をもってシステムを運用することだ。作業者は、端末を身に付けさえすれば、今までの通りの動きで良い。管理者はそれくらいの寛容さと度量をもって接っすれば作業者は安心する。データから動きを解析し、直すのはその後だ。
データさえ取れれば、あとは解析して改善策を導き出せる。その第一歩が可視化システムの位置づけだ。管理する側が気持ちよくなるのではなく、作業者側を気持ちよくし、動きを変える。作業者主体であることを忘れてはいけない。