どれだけ工場が「安全第一」を掲げて最大限に注意を払っていても、事故ゼロまでの道は長く険しい。「人のふり見て我がふり直せ」事故を減らすには、過去の事故の事例からその発生原因を知り、再発を未然に防ぐことが一番の近道だ。NITE(製品評価技術基盤機構、ナイト)は、電気設備(電気工作物)の事故情報のデータを一元管理し、誰でも検索してみることができる「詳報公表システム」を開発し、1月31日からリリースした。
誰でも検索OK
増加傾向の事故 年間1万5000件超
NITEの調査(「電気保安の現状について 令和元年度電気保安統計の概要」)によると、2010年の1年間の事故件数は1万2677件で、その後も1万2000~3000程度で推移していたが、18年、19年と2年連続で1万5000件を突破。労災発生件数は年々減少傾向にある一方で、電気設備の事故件数は微増を続けている。
事故内容は電気設備の破損(1万1344件)、供給支障(3628件)と圧倒的で、配電線路での事故が大半を占めている。死傷事故は横ばいだが、火事になったケースが19年度は16件発生し、前年の4倍。それ以前から比べても非常に多くなっている。設備の老朽化やベテラン社員の減少などが背景にあり、以前に比べて工場は事故が起こりやすい環境になっている。
詳細な事故情報閲覧・DL可能
電気を供給・使用するために使われている電気事業用・自家用の電気工作物、いわゆる電気設備は、事故を起こした場合、電気事業法電気関係報告規則第3条に基づいて事故情報を報告する義務がある。これが「詳報」と呼ばれるもので、毎年500件以上が国と経済産業省に報告されている。詳報には、事故の発生日時から内容、原因、再発防止策などが細かくまとめられており、国・経産省はそのデータを蓄積し、公開も行っている。
そして今回、NITE電力安全センターは、経済産業省本省や各産業保安監督部と連携し、全国の電気工作物の事故情報(詳報)のデータを一元化して「詳報公表システム」として公開した。
従来は産業保安監督部の管轄地域別に公開されていたのに対し、「詳報公表システム」は全国のデータを一元管理し、事故情報をきめ細かい検索してCSVデータとして抽出でき、ダウンロード等をすることができる。
収録されている内容について、例えば、2020年11月の東北地方での電気火災は、操業中に操作室内動力分電盤から出火し、動力分電盤および電灯分電盤が焼失し、操作室も全焼。原因は動力分電盤に接続されていた低圧ケーブル(1987年製)の被覆が経年劣化し、相間短絡により発火。全職員による目視点検の強化、設備更新頻度の短縮等で再発を防止するとしている。
また関東地方での電気火災は、工場建屋内の製造設備から発火し、設備周辺および屋内設置のキュービクルの一部にも延焼。夜間の空運転中に材料投入部分の異常過熱が原因で出火。再発防止は、終業時の設備点検として異音・過熱等の点検を強化、材料投入部分の分解点検を定期化するなどで対応するとしている。
電気事業者や電気保安管理技術者等が同システムを活用し、自社と似たような設備で過去に発生した事故を調べたり、発生した事故と類似した事例を調べたりすることで、未然防止や再発防止に活用することを狙いとしている。