MOXAは、台湾の産業用ネットワーク機器メーカーで、世界でも5本の指に入る大手メーカーだ。
産業用ネットワーク機器メーカーとして30年以上の歴史があり、世界80カ国以上の国で7100万以上の機器を接続してきた。日本市場でも20年以上前から製品を供給してきたが、産業IoTや製造業DXの本格展開に合わせ、20年に日本法人を開設し、ここに来て本格的な展開をスタートしている。
製造業大国日本は魅力的な市場
同社にとって日本は注力市場の位置づけ。DXやIoT需要でネットワークへの投資は増加傾向にあり、産業用ネットワーク機器の企業間競争も激しくなっている。
MOXAジャパンのチャールズ・チェンゼネラルマネージャーによると、「当社内のシェアはヨーロッパで30%、アメリカで18%、中国で20%だが、日本は数%にとどまっている。日本はGDP世界3位の経済大国であり、ポテンシャルが非常に高く、魅力的な市場だ」と分析。日本法人としては、まずMOXAの認知度の向上とサポート、サービスを中心に行っていくとしている。
産業用に特化しIIoT製品展開
ネットワーク機器を開発するメーカーの数は多く、またユーザーの現場では調達のしやすさからコンシューマや業務用のネットワーク機器で代用しているケースもあり、競争は激しい。
チャールズ氏によると、業務用の汎用機器に少し手を入れて産業用とした製品や、OEM製品が多いなか、産業用のネットワーク機器を専業としているのは同社の強みだという。同社は産業用として専門に設計開発、製造し、そこが製品の品質と信頼性において大きく異なるとしている。また近年は「データ=資産」の認識も高まっていて、現場でも産業用の基準を満たした信頼性の高いものが選ばれるという。
製品ポートフォリオはスイッチやルーター、無線LAN、セキュリティ、IoTゲートウェイなどをそろえ、フィールドからエッジ、クラウドまで必要な領域をカバー。大手ながらカスタムにも対応し、「IIoTコネクティビティカンパニーとして特化しているのは当社の強みだ」(チャールズ氏)。
DXやIIoTに対する関心は高く、現場主導でそれらを進めたいが、生産技術部を中心とするOTやFA技術者は、通信ネットワークやIT系技術に慣れておらず、そこがネックとなっているケースは多い。そこに対し同社は、専門的な知識や技術がいらず、必要なネットワークが簡単に構築できる製品とツールを数多く提供している。
TSNに注力、三菱電機とダブルブランド
現在の注力分野の一つは、最新の産業用ネットワーク技術として注目されている「TSN」関連だ。三菱電機に対して産業用TSNスイッチ「TSN-G5008シリーズ」をダブルブランド製品として供給を開始し、三菱電機は21年12月から「CC-Link IE TSN対応産業用マネージドスイッチ型番NZ2MHG-TSNT8F2」としてすでに発売している。
今後の展開についてチャールズ氏は「産業用ネットワークは、20年前のM2MからIoT、IIoTへと進化してきた。これまで日本の製造業は、信頼性を重視するために新技術の導入に慎重だったが、ビッグデータ活用や多品種少量生産が進むなかで設備稼働率を上げるためにはネットワークの整備にも目を向け始めた。通信環境も高速で安定するようになり、ビッグデータへの流れはできている。MOXAとして日本市場での認知度をさらに高め、ネットワーク機器の市場を広げていく」と話している。