横河電機とJSRは、共同実証実験を通じて、世界で初めてAI による自律制御で化学プラントを35日間、連続で制御することに成功した。これにより実際のプラントで「強化学習 AI が安全に適用できる」ことと、既存の制御手法(PID 制御・APC)が適応できない領域、運転員が制御で使用するバルブの操作量を自ら考えて入力する「手動制御のみでしか対応できなかった箇所」を AI が制御できることを確認した。
プロセス産業の制御は、化学反応をともない極めて高い信頼性が求められるが、実証実験では蒸留塔の留出物の品質や液面レベルを適切な状態に保ち、かつ排熱を熱源として最大
限に活用するという複雑な条件を AI が満たし、品質の安定化、高収量、省エネ制御を実現。「急激な外気温の変化」が制御の状態を乱す大きな「外的要因(外乱)」だったが、降雨や降雪の環境下でも精製された製品は品質基準を満たすことができ、すでに出荷済みとなっている。良品のみが生産ができ、規格外品が発生することによる燃料や人件費等の損失、時間的損失もなくすことができたとしている。
操業の安全確保については、①プラントシミュレータでAI制御モデルを生成、②AI制御モデルの妥当性を総合的に評価、③安全を確保したうえで実プラント制御の3ステップを踏んで実施。②の総合評価では、過去の運転データを与えて安定稼働、異常時の制御の様子を確認し、リアルタイム操業データを与えての安定稼働と精製された製品の品質チェック、FKDPPの制御方法に対する熟練の運転員の納得を経た上で評価した。③の実プラントでの制御も、既存インターロックなどの各種安全機能で安全を確保し、統合生産制御システムと統合してプラント創業に組み込み、運用面での安全も確保した上で行なった。
今回、制御で使ったAI は、2018 年に横河電機と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同開発し、IEEE 国際学会で「プラントへ活用可能な強化学習技術」として世界で初めて認められた FKDPPというアルゴリズム。既存の制御手法では自動化できなかった箇所に適用でき、「品質と省エネの両立」といった相互干渉して実現が難しくなる目標にも対応できる強みがある。デモ機、シミュレータでの実験を通じて理論から実用に範囲を広げ、今回、実際のプラントでの実運用に成功した。
今後、AI自律制御に興味を持つプラントを募集して共創を強化するほか、プラント自律化のための製品・ソリューションの早期提供を目指す。