人間社会は様々な利害関係で成り立っている。高校や大学のような学園生活に終止符を打って稼ぐ生活が始まる。現場に慣れて、仕事を覚えることに無我夢中の時が過ぎる。少し余裕のできる五月頃にかかるのが新入社員の五月病である。なんとなく会社に行きたくない五月病の基になっているのが学園生活ではあまり経験してこなかった人間関係の煩わしさである。学園生活の人間関係とは異なって感じられるのは利害が絡んでくるからである。
現場内では仕事を通して毎日顔を合せているから共通語が生まれ、共通の話題でコミュニケーションがとれてくる。時が経ってお互いの利害を理解し合えるようになり、人間関係をうまくコントロールすることで現場は楽しくなる。営業職の場合は顧客の現場に足を踏み入れなければならない。顧客の職場は企業文化風土が違う。使っている言葉が通じ顧客とは毎日顔を合せない。しかし現場の人間関係とは違ってお互いの利害は明白である。利害にまつわる用件が共通の話題であり、そこで使われる言葉も共通用語である。したがってお得意様となった顧客とは安易にコミュニケーションがとれる。
顧客には仕事とは別に人間関係の煩わしい人もいるが大概は自社の現場のように複雑で煩わしい人間関係のコントロールをしなくてもいい。だから人間関係が不得意だといって営業職を希望してない販売員でも顧客の用件を無我夢中でこなしていれば営業に慣れてくる。
それでも三年位たった頃にやはり自分は営業に向いていないと言って辞める人がいる。それに現在活動中の中堅販売員でも用件のない新規客開拓活動はかなり苦手である。この様な現像は何故起きるのかと言えば顧客との関係は会社対会社の利害の調整であるが現場で働く人との関係は利害の調整能力だけではなく人間関係構築の仕方が重要であることがわかる。日本の経済が長いことデフレ環境であったせいもあって国内の製造現場に大きな変化は見られなかった。だから機器部品営業は顧客サービスの充実や顧客深耕活動に専念することで予定売上の確保ができた。それ故に人間関係と言えば用事や商談の前後にする個人的雑談をスムーズにできていれば良しとし、顧客になってもらうための本格的な人間関係構力をあまり意識してなかった。
しかし令和年間に成長を続けるには内向き営業から脱出して外へ向かって進む営業を指向する必要がある。つまり平成育ちの営業が苦手とする必要がある。つまり平成育ちの営業が苦手とする顧客拡大や主要客の見直し、入れ替えを積極的にやらねばならない。それは新規の人との関係づくりから始まる。従来の顧客とはお互いの利害を共通の話題にし、共通の言葉にしてコミュニケーションをとってきた。
しかし新規の顧客とは始めから利害は嚙み合わない。共通の言葉も使えないからどの様にしてコミュニケーションを取ればいいかと戸惑ってしまう。ややもすると販売員に強いストレスを長期的にかけてしまう。然もなくば色々な理由をつけていつの間にか内向き営業に戻ってしまう。販売員にとっては従来の内向き営業から外向き営業へ戦略的転換をするのであるからスローガン的に顧客をふやそうとか主要客を見直そうなどのかけ声ではしようがない。令和年間の営業は外向き営業だということを根付かせるには新規客拡大作戦や主要客見直し作業等を手を替え品を替えして断続的に何度も実行することである。それは大変だった五月病も現場の共通語の習得と共通の話題で克服できた様に技術者や現場の共通語や共通の話題が身につき外向き営業も苦になくなるということである。