2016年のダボス会議(世界経済フォーラム)で使われ、バズワードとして広まった「VUCA」という言葉。不安定で予測不可能な未来がやってくるという話だったが、5年も立たないうちに、本当にそんな未来がやってきてしまった。同列に並べては失礼だが、あれだけブームを巻き起こしたが、結局オカルトで大外れしたノストラダムスの大予言とは大違いだった。とは言え、当たった/外れたとふざけてばかりもいられない。実際、未曾有の厳しい時代がやってきているのだから 。
2020年21年とコロナ禍で世界経済は大混乱した。それでも2022年はコロナ禍がある程度おさまり、経済活動が復活に向けて力強く推移すると思われていたところに、このロシアのウクライナ侵攻による世界的な大混乱。またも見通しが立たなくなっている。国内でもガソリンをはじめ燃料価格の高騰や食品や日用品の値上げが相次ぎ、需要の冷え込みが懸念される。半導体不足も落ち着くどころか不安定さが増し、自動車や産業機器の納期問題は棚上げされたまま。見通し明るいと思っていたら、突然の雷雨。これからは何が起きてもおかしくない。本当にそんな心境だ 。
VUCA時代をどう生き残っていくか。その解決策に言及していたのは2020年版の「ものづくり白書」で、「ダイナミックケイパビリティ(企業変革力の強化)」としていた。時代や社会の変化を敏感にとらえ、その場の状況に応じて形を変えながら変化に追従していく。強固・堅牢で耐えるのではなく、しなやかに受け流すイメージ。それはまさに「上善水の如し」(老子)。日本酒の銘柄ではなくて、中国の老子の故事成語)。舵取りが難しいこの局面、既成概念にとらわれず、変化を許容する。それが生き抜くポイントだ 。