流れ生産してくれる設備は売っていない。
工場を見学すると、一つの場所に同じような設備が並んでいるレイアウトであることが多いと思います。同じ工程の設備がそれぞれ一カ所に配置されているので工程別レイアウトと呼ばれています。
一方で、いろいろな設備が一カ所に配置されていて、よく見ると製品を作る順番に並んでいるレイアウトもあります。これは工程順レイアウトと呼ばれます。
それぞれに長所・短所がありますので、どちらが優れているとは言い切れません。しかしこれからの日本の製造業の取るべき方向が、少品種大量生産ではなく多品種少量生産であり、少ない在庫でお客さまに幅広い商品をタイムリーに供給していくのだと考えると、中間在庫を持たないで一気に全工程を完結してしまう工程順レイアウトになっていくのがいいと思います。
しかし設備メーカーが売っている機械は基本的に単機能です。旋盤や研削機、プレス機、あるいは塗装機など、それぞれの専門メーカーが出していますが、そのほとんどがどこの工場でも使えるように汎用機として売られています。
ですから、流れ生産をするためには、汎用機と汎用機の間を自分たちでつなぐ必用が出てきます。機種別に並べるのではなく、工程順に並べるレイアウトにするのです。私はこれを「流レイアウト」とも呼んでいますが、この場合は工程間をどうつなぐかに工夫をすることが大切です。工程間をつなぐ仕掛けを自社で造ることです。つなぐだけのシンプルな専用機なら造れるし、生産性もリードタイムもレベルアップできます。独自の強いモノづくりができるようになるステップです。
もし、自社に最適な流れ生産の設備が売っているとしたら、フルオーダー設備でとても大きな金額になるか、誰にでもできる程度のモノづくりしか行っていないかのどちらかということになります。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら
https://www.kaizenproject.jp/