技術力生かし課題解決へ
モノ売りからコト売りへ。機器販売からソリューションやシステム、はたまたコンサルティングといった顧客への課題解決力とその提案力が製造業のDXにおけるキーワードとなっている。「エレクトロニクスソリューションズ・カンパニー」のカナデンも、技術力を武器とした提案を強化し、2019年にその推進組織としてソリューション技術本部を立ち上げた。発足から3年がたち、相談・受注の実績も増える中、さらなる強化を進めている。
商社の技術部門としての強みを活かす
ソリューション技術本部は、営業部門と連携してソリューションビジネスを伸ばしていくことを目的とし、もともとFA事業部内にあった技術部門とSI事業部内の技術部門が一緒になって19年に発足。東京、大阪、名古屋、九州の各拠点に技術スタッフが駐在している。また、2022年4月にソリューション営業部を新設した。ソリューション力を武器に新しい顧客を開拓し、ソリューションビジネスをさらに拡大する。
顧客の困り事を引き出し、その解決策を提案するビジネスを展開することで、製造業の顧客にも少しずつ認知され始めている。
ソリューション技術本部を率いる北田智博本部長によると、「年々相談件数は増加している。製造業のお客さまは、労働力不足への心配から、生産性向上と自動化に対する相談が多い」という。
しかもその相談内容は、「お客様も昔から生産性向上の取り組みは自社で進めており、今は投資対効果(ROI)の低い工程の自動化相談が増えている状態」(北田氏)のため提案スキルのレベルが高く、難易度も高め。だからこそ最先端の技術に幅広く触れることができ、さまざまな技術を組み合わせて最適なソリューションを構築できる商社の技術部門としてのメリットが強みとなり、ユニークな提案が案件受注につながっている。
FAとPAの両方の技術を生かしたユニークな提案
例えば、ある飲料メーカーの工場の制御システムについて、従来のDCSからプロセス・計装対応のシーケンサ(PLC)を使った新規システムを提案して置き換えに成功した。
DCSは、プロセス産業や飲食料品の工場で昔から広く使われている制御システムだが、システム自体の規模が大きく、構築と維持・運営にコストがかかるのが難点。一方、シーケンサはシステム構築の柔軟性と拡張性は高く、DCSに比べて圧倒的にコストも安いが、一般的には組み立て製造業に使うものというイメージが染み付いている。プロセス産業の基幹プロセス工程に使うケースは少なく、その発想もレアだ。
それに対し同社は、DCSとFAシステムの両方の構築経験を生かし、計装対応のシーケンサをベースとした比較的安価なプロセスの制御システムを開発。システム更新のタイミングだったことや顧客がDXで新たなチャレンジを望んでいたことから、開発したシステムが高く評価され受注につながった。
すでに一工程で導入、運用されていて、現在は別の工程でも構築中。また、飲食料品メーカーやプロセス製造業向けにシステムをパッケージ化して横展開も進めている。
独自製品のスマートロボットシステム「KaRy(キャリー)」
現在ソリューション事業の強化に向け、人手不足や生産性向上に役立つソリューションをパッケージ化したオリジナル製品を開発し提案を進めている。
その一つが可搬式のスマートロボットシステム「KaRy」。キャスター付き架台の上に可搬重量4kg(7kg)の産業用ロボットが取り付けられたロボットシステムで、ロボットコントローラ、PLC、HMIまで必要部材がすべてセットになって198万円~。安全機能付きなら278万円~。ピックアンドプレイス、段積み、パレタイズ、デパレタイズのサンプルプログラムがプリインストールされており、ロボットを初めて導入する方でも導入が検討しやすいものになっている。
また協働ロボットが注目されているが、タクトが遅いという弱点がある。それに対し「KaRy」は産業用ロボットなので高速動作ができ、生産性の高い作業が可能。架台にはキャスターが付いているので用途によって場所を移動して使用可能。オプションの安全機能付きなら安全柵ナシで稼働できるので、スペースの有効利用も可能となっている。
映像とデータを連携する現場カイゼンプラットフォーム「FAtis(フェイティス)」
もう一つが、カメラ画像から得られる現場の情報と、センサや機器から集めた情報を集中管理して連携させ、それを現場カイゼンに役立てるプラットフォーム「FAtis」だ。
通常、現場にある機器やセンサの情報と、現場を監視するネットワークカメラは別々の管理で連携していない。そこで同社は映像管理システム「NxWitnessVMS」をベースとしたオリジナルのIoTプラットフォームを開発。現場のIoTセンサのデータ、シーケンサ内にある機器の稼働データ、ネットワークカメラの画像データをひとつのプラットフォーム上に集約し、時系列データとして整理して表示・管理できるようにした。
映像と各種データを同期した状態で管理できることによって、事故やトラブルが起きた際もドライブレコーダーのように画像とデータをもとに検証でき、原因究明と再発防止の取り組みが容易になるほか、データとカメラ画像を同一画面上に配置するダッシュボードを作り、それを見ながら現場の遠隔監視や機器の遠隔操作を通じたリモート現場立ち上げなど、現場に行かなくても効率的な対応が可能になる。またAIカメラと連携し、危険エリアへの人の立ち入り検知と警告、リモートによる現場の作業研修などにも利用可能となり、さらなるネットワークカメラの活用領域を広げ、製造業のみならず公共やビルなど、ビジネスエリアは拡大していく。
北田氏は「これまで映像と制御は別々で、つなげるためには大きな時間とコストがかかっていた。これらをつなげることに意味があり、「FAtis」は、カメラをセンサとして捉えて映像の活用を進めていく」としている。
オリジナル製品の開発を推進
今後について北田氏は「KaRy」も「FAtis」も、ソリューション技術本部がなく、従来のままであったら出てこなかった製品だ。お客さまのやりたいことを実現するための基盤となるオリジナル製品の開発に力を入れ、課題解決に貢献する」としている。