ドラえもん、キャプテン翼、ドラゴンボール、セーラームーン、ジョジョの奇妙な冒険、ワンピース、ナルト、僕のヒーローアカデミア、鬼滅の刃。海外で大人気になった日本のマンガを古いものから挙げていくとこんなところだろうか。マンガは日本が誇る素晴らしい文化だ。世界的な大ヒット作が生まれていることに加え、それを下支えしている裾野の広さや種類の豊富さには目を見張るものがある 。
ギャグ、バトル、スポーツ、恋愛、ファンタジー、SFなど定番のパターンに加え、何気ない日常生活を切り取ってエッセー風に見せるものや、料理や釣りといった趣味や娯楽の世界を解説するもの、さらにはアンダーグラウンドで閲覧注意のものなど、いまや世の中のあらゆるものがマンガの題材になり、最近はそれがさらに細かくなっている印象だ。また、いわゆる週刊誌や月刊誌などの商業マンガ、趣味で作る同人マンガ作品に加え、最近はTwitterなどSNSで個人のマンガが投稿され、世にあふれるマンガの数と種類は増えていくばかり。
何でもかんでもマンガにしてしまう日本人の感性には驚くしかない。しかし、それが日本のマンガ文化の多様性を生み、彩りを豊かにし、そこから大ヒットマンガ家や作品が生まれるのだから面白い。個人の才能はもちろんだが、たくさんの人が競って投稿し、ほんの小さな出来事でも拾って形にして発表しあえる、多様性に富み、刺激的な環境がマンガ文化の拡大を支えている 。
日本の製造業は、大企業が1%、残り99%は中小企業だ。世界的に見ても中小企業の多い国とされ、その状態が今の競争力を失わせている原因だと言う人もいる。しかし見方を変えれば、ある意味、技術を持つ企業がたくさん存在し、裾野が広く、多様性に富んでいる状態とも言える。もちろん赤字を垂れ流し続けるゾンビ企業は論外だが、ニッチ領域で存在感を発揮し、利益率の高い企業はたくさんある。
一方で、得意とする技術は高くて素晴らしくても、それをビジネスに生かせていない企業もたくさんある。伸びる企業を伸ばし、伸びる要素を持つ企業を救い、ニッチトップ企業を増やしていく。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」マンガ文化のように、小粒でも個性豊かな企業の数を増やし業界を盛り上げていくこと。それが日本の製造業の生きる道であり、その集合体が理想の姿なのではないだろうか。