儲かるメーカー改善の急所101項【急所60】モノの動かし方

モノを持って運ばない。移動させるのに動力を使わない。

私は「からくり」のカイゼンが大好きです。センサーとモーターを使っての自動化など、もちろんカイゼンには欠かせませんが、目の前でシンプルな構造で動く「からくり」カイゼンを見るとやはり心が躍ります。

そういう目で見た時に、からくりとはいえないかもしれませんが、重力を使った移動のカイゼンを見つけると興奮してしまいます。

わずか500グラムのモノであっても、一日中繰り返して持ち上げたり降ろしたりすると大変な労力になります。一方、1トン の重さがあっても、レールの上を台車で滑らせれば軽々と動かすことができます。

自然の摂理で分かっているはずのことでも、わざわざ持って運んだり、上げ下ろしに労力を使っている工場は大変に多いのです。フォークリフトなど機械を使っているところも多いのですが、工場内の運搬とは前工程から後工程への横移動なのですから基本的に滑らせることだといえます。高さをそろえて滑らせることができればいいのです。

さらに言えば、傾斜があればモノは何もしないでも動きます。後工程に渡すときに傾斜があれば動力を使わないでタダで運べます。傾斜が無くても、コンベヤーなどを使えば軽い力で移動させることが可能です。

モノを運ぶという作業は、いったん持ち上げてから運ぶのであれば大変な作業です。工場の中にある作業で一番疲れる大変な作業かもしれません。しかしいくらたくさん運んでも一円も付加価値は増えないのですから、極力、人手や動力を使わないことを考えましょう。

■著者プロフィール

【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。

一般社団法人日本カイゼンプロジェクト

改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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