先日ある新規のお客さまから「オートメーション新聞は多くの企業のいろいろな情報が掲載されていて参考になる」と褒めていただいた。その一方で、「自社のことや媒体の情報が少ないのは良くない。もっと自分たちが取り組んでいることを発信することで、周りもどんな企業か理解できるようになる」と指摘された。確かに、業界の情報を載せることに夢中になり、自社のことを伝えることをおろそかにしていた。信頼される媒体になるには、自らの情報をオープンにし、知ってもらうことは不可欠だ。良い気づきを与えてもらった。
製造業でも「見える化」に取り組んでいる企業は多い。製造現場の稼働状況など自社のあらゆる活動を数値化し、そのデータをもとに業務改善や効率化につなげようというものだが、果たしてゴールはそれで良いのだろうか? というのも、見える化のゴールを改善や業務効率化につなげるだけではもったいないと思うからだ。見える化で集めてまとめたデータは企業の等身大の姿。顧客や取引先、特に新しく取引を開始したり、検討したりしているところが知りたいのは、飾らない本当の姿。生産は効率的に行われているか、品質管理は大丈夫か、与信や財務は問題ないか、そもそも信頼に足る会社かなど。そこを恒常的にうまく見せていくことで、その企業の魅力を高めることはできるはず。どのデータをどのように公開するかの取捨選択や見せ方は工夫しなければならないが、内向きの思考から脱却し、外向けに発信強化する材料に使う発想も必要ではないだろうか。
企業を評価する際の基準は、製品サービスだけでなく、その製造現場や人も含まれる。取引開始前に工場視察があるのはそのあらわれであり、発注者は企業全体を見ている。普段から見られることに慣れておく、見られても良い状態にしておくことは重要だ。さらに言うと、積極的に見せていくことは企業の自信と魅力を伝えることになり、それが新しいビジネスにつながる。これまで日本の製造業はつつましく、情報やPR戦略に弱かった。そこを解消し、自信を持って自社の等身大の姿を見せていけば販路は開ける。見える化は、見せる化までしてこそ本当に生きる。