制御盤の設計・製造工程をデジタル技術を使って効率化し、制御盤関連各社の体質強化を実現する「制御盤DX」。しかしそこに至るまではいくつもの壁・ハードルが存在する。日本電機工業会(JEMA)制御盤2030ワーキンググループは、制御盤の制作工程の将来の形として「制御盤2030」を提示し、さらに制御盤DXを阻む壁とそれに対する推進策を「制御盤製造業界向けDXガイドライン」としてまとめている。本記事では、同ガイドラインをもとに、制御盤DX実現に立ちはだかる壁とその解決策を紹介する。
2回目は、顧客と制御盤メーカーまたはそのパートナー企業とのやりとりの間における「仕様の提示・確認工程における伝達手段の違い」の壁。
仕様の伝達について、さすがに実際の紙の図面を送付してやりとりするケースはほとんどなくなっているが、FAXや紙図面をスキャンしてPDFデータ化したやりとりは依然として多く存在する。PDFはすぐに図面をデータ化でき、メールでも送れて便利だが、それはデジタル化やDXでいう「データ活用」ではない。PDFは図面の送付の手間を省いているだけで、図面の活用や利便性を高めている訳ではない。逆にPDFを重宝することがDXの壁となり、デジタルデータの活用による効率化を難しくしてしまっているという現状がある。
伝達手段の壁を解決するには、データフォーマットを整備することだが、その実現には一段ずつステップを踏んでいくことが大事となる。
はじめは、FAXやPDFのスキャンデータの送受信で仕様を確認することを止め、制御盤の発注者がCADやBOMデータなどを提供し、それをもって制御盤メーカーと仕様を確認する仕組みを作ること。次は、変更履歴が残る形式で伝達し、過去の発注内容との差異や仕様変更が明確に分かるようにすること。3つ目が、データをクラウドで共有し、情報の変更や更新がリアルタイムで反映されるようにすること。
これらを行うことで伝達ミスや確認漏れが減ることに加え、制御盤メーカーがFAXやPDFから新たに一から図面を起こす非効率がなくなり、納期短縮につなげることができる。さらに、次や他の工程にも展開しやすくなり、真の意味でのデータ活用が可能になる。