コロナ後 人手不足・自動化需要がカギ
富士経済の調査によると、業務・サービスロボットの世界市場は、2021年は2兆7410億円で、前年比20%増となった。これが30年には5兆7628億円まで成長し、約2.1倍の市場規模まで拡大すると予測している。
約2倍に市場拡大
21年の業務・サービスロボット市場の傾向としては、医療・介護用ロボットは、コロナ禍で業務負担が大きく、人手不足も進む医療従事者が業務に専念できるように、医療機関などで紫外線照射ロボットの導入や、遠隔診療向けの手術支援ロボットなどが拡大。
家庭用は、巣ごもり需要で家庭内で過ごす時間が増えたため、その生活の充実のためにお掃除ロボットやコミュニケーションロボット、スマートスピーカーなどが伸長した。
オフィス・店舗向けでは、リモートワークや飲食店の営業時間短縮要請などで設備投資が減少したが、一方でテレプレゼンスロボットやデリバリーロボット、 配膳ロボットなどのニーズが高まった。建設/物流・搬送/レスキュー/インフラ/農業用は、短期雇用が難しくなったことによる人手不足やEC拡大などを背景にデリバリーロボットなどが伸びた。
今後に向けて大きな成長が見込める分野としては、施設や公共空間で自立走行して警備や監視を行う業務用セキュリティロボットは、2021年はコロナ禍で市場は停滞したが、警備関連の人手不足は依然として深刻化しており、大手企業のオフィスビルを中心に期待。エレベータとの連携によるビルや施設丸ごとカバーができるようになると、より普及が進むと見ている。
業務用清掃ロボットは、2021年は日系メーカーが海外展開を強化したことで伸長し、コロナ禍が下火になってきたことから30年には21年日8.3倍まで拡大する見通し。
配膳ロボットは、飲食店や給食施設、商業施設、宿泊施設などで配膳台や収納庫に飲食物を載せて配膳、下膳するロボットとして中国を中心に伸びてきたが、コロナ禍で非接触ニーズとスタッフ不足によって世界各国で大きく伸びた。日本も立ち上がりこそ遅れたが、外食チェーンでも導入が始まっている。
施設内のデリバリーロボットは病院や療養施設での非接触ニーズを背景に21年は導入が進んだが、今後はオフィス需要や公共機関などでの導入が期待されている。
屋外用のデリバリーロボットは、公道走行の許可/不許可が普及の鍵を握り、許可されているアメリカや中国が先行。日本はこれから試験導入がはじまるが、時間がかかる見通し。郵便物やEC商品、フード、医薬品、クリーニングの受け渡しなどの利用が見込まれており、法規制の問題さえクリアすれば30年は3.5倍程度まで拡大すると見られている。
またAIやRPAといったソフトウエアロボットは、21年は医療や金融、コールセンターなどの需要増加により1兆2750億円(25.8%増)となった。利用の土台がつくられはじめたことから、30年には3.5倍となる4兆4910億円まで成長すると見込む。
同調査は、業務・サービスロボットとして29品目、AI・人工知能/RPAとして4品目を調査したもの。業務・サービスロボットは、医療・介護用の手術支援ロボットや介護ロボット、紫外線照射ロボット、家庭用のお掃除ロボットやスマートスピーカー、オフィス・店舗用の清掃ロボット、受付案内ロボット、セキュリティロボット、調理ロボット、配膳ロボット、建設/物流・搬送/レスキュー/インフラ/農業用のAGVやドローン、点検ロボットなどを対象としている。