2022年版の「ものづくり白書」が公開された。日本の製造業の市況、経営状況などを分析し、事業環境の変化として原油価格の高騰、部材・素材不足、DX、カーボンニュートラルなどを取り上げ、状況を解説している。今回もざっと目を通し、コロナ禍やサプライチェーンの大混乱、世界情勢の悪化などの問題への対応に多くの内容が割かれていたのは仕方がないが、内向きで未来志向は感じられなかったのが残念だ。
懐古主義になるのは本意ではないが、10年前の2012年、2013年頃のものづくり白書は、日本の製造業の業績が厳しい状況にあるなかで発行され、強いメッセージ性があって非常に心に響いた。日本の製造業は生きるか死ぬかの分岐点にあり、生き残るためには、市場に合わせた製品・サービスを開発し、積極的に海外へ打って出て市場を開拓することが重要であるとし、加えて従来のビジネスモデルを変える必要性にも言及している。
商売は顧客やライバル会社、または国と国同志の競い合いであり、勝つため・生き残るためにはどうするか、利益を大きく出すには何をすれば良いのかのヒントやポイント、厳しい意見がまとまっていた。未来に向けての参考になる良い内容だった。
2015年には、世界一のロボット大国を目指し、ロボット産業を振興するとした「ロボット新戦略」が策定された。2017年には日本版インダストリー4.0ともいうべき「コネクテッドインダストリーズ」の概念が作られた。当時はワクワクして期待したが、それから数年がたって、今ではそれらの話題はほとんど聞こえてこない。
経済産業省のWEBサイトの関連ページは移動・削除されてアクセスできなくなっていたりもする。あきれたものだ。日本のものづくり、製造業はどこへ行くのか? 国や行政は製造業界をどうしようとしているのか。今その姿はまったく見えない。