制御盤の設計・製造工程をデジタル技術を使って効率化し、制御盤関連各社の体質強化を実現する「制御盤DX」。しかしそこに至るまではいくつもの壁・ハードルが存在する。日本電機工業会(JEMA)制御盤2030ワーキンググループは、制御盤の製作工程の将来の形として「制御盤2030」を提示し、さらに制御盤DXを阻む壁とそれに対する推進策を「制御盤製造業界向けDXガイドライン」としてまとめている。本記事では、同ガイドラインをもとに、制御盤DX実現に立ちはだかる壁とその解決策を紹介する。
4回目は「仕様の提示・確認工程における仕様作成者のこだわり」の壁。
DXを推進するにあたっての壁となっているのが「人」であることは珍しくない。DXに取り組むか否かの決断をくだす経営者だったり、長年、自分の裁量で現場を仕切ってきたベテラン社員であったり、はたまた全社を巻き込んだDXを進めるには適任ではないDX推進担当だったりとさまざま。現場や業務に対して権限や責任、さらには知見や技術、経験を持つ人が個人の感情や考えにこだわり、それが障害となってしまっていることは多々ある。
制御盤に関しても同様のケースは後を絶たず、非効率を生み出している。機械・装置メーカー、さらにはエンドユーザーも含めた上流側が発注者として強い力と決定権を持ち、昔ながらのしがらみやこだわり、癖やプライドのまま各社各様で仕様を作成することで、受注者・納品者となる制御盤メーカーには多種多様で統一感のない基準や仕様の発注がいまだに多く行われている。それがまかり通っていることで、制御盤メーカーはそれぞれに仕様を細かく確認し、個別に部品を調達し、ミスのないように一つひとつ組み立てる必要に迫られ、ひいては納期の長期化やコスト高につながってしまっている。
それを解決するためには、受注者・納品者である制御盤メーカーが、発注者の仕様をそのまま受けるのではなく、見積もりの精度や効率を改善し、製作基準や仕様を変更した場合のコストや納期に対する効果・メリットを提案することが重要なポイントだ。
発注者側は、昔からの通例にのっとって自分たちの希望する仕様を発注しているだけであり、それが制御盤業界の中で古くて標準的ではないことは知らず、それをそのままにしておくデメリットやリスクに気づいていない可能性は大いにある。そこを制御盤メーカーが制御盤の専門家として発注者に仕様変更や更新を提案することで、発注者側には性能や品質向上をもたらし、制御盤メーカー側にも業務効率アップや部品をまとめて購入できることによるコスト効果などのメリットが生まれてくる。