はじめに
納期遅延が深刻化しているリレーや電磁開閉器、PLCなど、主な配電機器・制御機器について、一部製品の納期目安が判明し、一覧としてまとめた。製品・機種によってバラバラだが、多くは6カ月先、長いものでは1年先となっており、納期が改善したものもごく一部あるが、多くは変化なしとなっており、良化したとは言えない状況だ。一方で、世界的にコロナ禍も収束に向かい、メーカーも生産量を増やしており、確実に状況は好転している。業界全体として今しばらくの我慢が続く。
納期目安表の見方
作成した主な配電制御機器の目安納期表は、製品群単位でまとめ、その製品群のなかで最も早く入手できる機種と納期を最短、最も入手に期日がかかる機種と納期を最長とし、「最短~最長」で表記している。納期には大きな幅があるが、あくまで「現在発注したらどれくらいの期間で入手できるのか」「いつまで待つ必要があるのか」の大まかな目安を示すためのものである。製品によって重複し、①②と数字が書いてあるものはメーカーの違いとなる。
ほとんどが6カ月〜12カ月待ち コントーラ・駆動機器は入手困難
半導体の入手困難が響くコントローラ・駆動機器。PLCは4~11カ月、表示器は5~12カ月、サーボは4~12カ月と半年~1年近くかかる見通し。加えて納期は少し悪化傾向にある。
リレー・電磁継電器は、4カ月から半年ほどで入手可能。特にソリッドステートリレーは入手困難が続く。リレーソケットは半年以上かかる見込みで、世界的な樹脂不足の影響が後を引いて長期化が続いている。電磁接触器・電磁開閉器は、機種・メーカーによって幅があるが、早いもので1カ月、平均して3~4カ月ほどとなっている。遮断器も幅があるが、配線遮断器は3~4カ月ほど、漏電遮断器は3~5カ月、気中遮断器は3カ月ほどとなっている。
特需と複数のトラブルが重なったことが主要因
納期遅延の原因イコール半導体不足と単純に言われることも多いが、事はそう簡単ではない。DXやデジタル関連の需要の急拡大に加え、脱炭素やカーボンニュートラルによる新たな需要創出、異常気象による工場停止、コロナ禍を契機とする物流の混乱、ロックダウン、品薄を見込んでの多重発注など、複数の要因が複雑に絡み合い、メーカーの生産キャパシティを超えた特需を生み出し、同時に、安定した生産・出荷を乱すトラブルがかけ合わさり、この状況を引き起こしている。
もともと半導体は、コロナ禍前からIoTやデジタル化の進展によって需要が急拡大していて需給バランスがギリギリだったところに、工場事故やコロナ禍のロックダウンによる生産停止で流通量が減り、そこに世界的なEVシフトの波が来たことでさらに需給バランスが乱れて今に至っている。
樹脂や銅も材料不足が続いており、特に銅は電線の主材料としてEVや脱炭素、カーボンニュートラルで需要が急拡大し、価格も高騰している。半導体と同じように世界中で獲得合戦が続き、再生可能エネルギー向けの需要拡大もあって飢餓感は強まっている。
また流通面においても、水面下で進んでいた部品不足が表に出だした頃から大量確保に動く企業が急激に増え、過度の在庫確保合戦が繰り広げられた。先行発注や二重、三重発注に近い発注も出ているとされ、そこで生産・流通が乱れた結果、市場と現場での焦りにつながり、正常化を阻害する要因にもなっている。
組み立て製造業ならではの生産方式も要因のひとつ
加えて、そもそも制御機器は、いくつもの部材を集めて順番に組み立てて完成するものであり、ひとつの部材が入ってこない、工程のひとつが止まれば、それで全体の生産はストップしてしまう性質のものである。
また、社会インフラや工場の生産を担い、高信頼性と品質が求められる産業機器であるため、簡単に部品を変更する、調達しやすい部品に入れ替えるということはしにくく、たとえ実行したとしても入念な検査が必要なため作業量や手間が増え、変更前よりも納期の長期化は避けられない。
これは、自動車も含めた組み立て製造業、特に嗜好品ではなく、生活必需品の製品群が共通して抱えるサガであり弱点。今回は半導体や樹脂、銅といったコア部材が、全世界的に不足したことにより、他からカバーして補うことができず、逆に全産業で取り合いになったことにより、余計に悪化してしまった格好だ。
2022年が正念場 回復は下期または2023年か
納期問題の解消は、年初では22年上期は厳しい状況が続き、早くても回復は22年下期から23年には好転するという見通しを立てていたが、状況は変わらず、早期回復は難しそうな勢いだ。
その一方で好材料もある。早くから生産量拡大に動いていた半導体メーカーに加え、配電制御機器メーカーも増産体制を整えている。例えば、三菱電機は、愛知県尾張旭市に130億円を投資してFA制御システムの新工場を建設するほか、31億円をかけてインドにも新工場を建設する。安川電機も技術開発拠点を安川テクノロジーセンターへの集約や中国での新工場建設等を行い、生産力の増強を進めている。
また世界的にコロナ禍が収束傾向にあることも好材料だ。コロナ禍の出口が見えなかった昨年、オミクロン株の脅威で不透明だった年初とは、現在はまったく異なる状況になっている。ゼロコロナ政策を継続している中国のロックダウン再発、ロシア・ウクライナ問題の影響拡大など、引き続き懸念事項はいくつもあるが、一昨年・昨年に比べて状況は好転しているのは間違いない。この1年が正念場となる。
■関連記事