電子商取引情報(EDI)導入を積極検討しよう
制御盤の設計・製造工程をデジタル技術を使って効率化し、制御盤関連各社の体質強化を実現する「制御盤DX」。しかしそこに至るまではいくつもの壁・ハードルが存在する。日本電機工業会(JEMA)制御盤2030ワーキンググループは、制御盤の制作工程の将来の形として「制御盤2030」を提示し、さらに制御盤DXを阻む壁とそれに対する推進策を「制御盤製造業界向けDXガイドライン」としてまとめている。本記事では、同ガイドラインをもとに、制御盤DX実現に立ちはだかる壁とその解決策を紹介する。
第6回目は、受注に関連する「商取引」の壁。
せっかく自社の技術や提案を高く評価されても、実績がない、取引口座がないという理由で受注を逃すケースは多々ある。特に近年は、効率化の名目で取引先を絞り、新規の口座開設に慎重な企業が増えている。制御盤業界も同様で、概算見積もりの依頼を受ける際、発注先での口座や過去の取引の有無を求められるケースが多く、この条件が長年、制御盤メーカーの新規取引先開拓の障壁となってきた。すでに受注実績のある制御盤メーカーにとっては新規参入から自社を守る防御壁にもなってきた関係上、一概にこれが悪であるとは言えないが、制御盤メーカーの自由競争や成長を阻害してきたのは事実だ。
また大手メーカーと口座開設する際には基本契約書を取り交わすが、選択肢のある発注側と、大手となんとか取引したい制御盤メーカー側では立場が異なり、これにより支払い条件が平等でないケースも散見する。
これもまた制御盤メーカーの不利となり、成長を妨げる要因のひとつにもなっている。
電子商取引情報(EDI)が解決策として有望視されているが、EDIが統一・標準化していないことに加え、制御盤メーカー自身も対応していないケースも多い。紙媒体を電子化してメールで送付しているだけでECMやCRMなど基幹システムと共有されておらず、データの共有や納品、検収、監査対応なども含めてデジタル化が必要となっている。
こうした課題に対し、口座開設の手続き簡素化・合理化には電子契約の導入が有効だが、与信審査や信用調査は従来と同様に必要となるため、そこは変わらない。また制御盤メーカーなど中小企業から大手企業に対してEDI導入を働きかけるのはハードルが高い。国や大企業側から中小企業へとEDI導入を促すのが望ましい形となっている。
またインボイス制度の導入や、2027年末のSAP ERPのサポート終了など受発注関連で大きく動くイベントがあり、このタイミングはEDI導入や取引のあり方を変える好機と見られている。