「イノベーション(innovation)」最近いたるところで聞く言葉だが、どこもかしこもイノベーションだらけで、軽い言葉になってしまった感がある。本来はアイデアから新しい価値を生み出し、社内外に変革をもたらすところまでを意味するが、最近は単に新しい技術やサービスを思いついただけで何の実績もないものがイノベーションを標榜し、また一つバズワード、言葉遊びの玩具が増えてしまったことに少し辟易している。
無から有を作るのは素晴らしいことだ。しかし生み出した後、同じように他で生み出されたものやサービスとの価値における生存競争を勝ち抜き、その結果として社内外に変革が起きる。そこまで出来てはじめてイノベーションと言える。その意味では、イノベーションに必要な要素は、新しいアイデアを生み出す創造力、発想力に加え、それを世間に知らしめる広報力、マーケティング力、さらには受注を多く獲得して社会へ浸透させる営業力、加えて定着して定番化させる保守やアフターサービス力まで、総合的なビジネス力とも言える。単なるアイデアや発想をイノベーションと捉え、賛美するのは違う。キチンと成功させて初めて真のイノベーションなのだ。そこを勘違いしてはいけない。
とはいえ、現実にはイノベーションを標榜する製品・サービスが溢れている。サービスの中身と言葉の意味を見比べて、しっくりきていないものも多いが、新しい価値の芽がたくさん生まれ、選択肢を増やしていることは事実であり、その傾向は大歓迎だ。選別はその成長過程で市場原理で行われればよく、ビジネスの種はいくらでもあるに越したことはない。何事にも物量は奇策に勝る。起業を促進して中小企業を増やし、そこから大企業へと育てる。そんな道筋を整理することが大切だ。