いまや「つながる」は当たり前の概念となり、産業用ネットワークは生産設備をはじめ工場内にある機器同士を接続し、情報をやりとりするためのインフラとして年々拡大・高度化が進んでいる。これまで産業用ネットワークはフィールドバスだったが、この5年ほどで主流はEthernetベースの産業用Ethernetへ移ってきている。またオープン化で相互接続がしやすくなったとは言え、規格間のシェア争いも激しくなっている。
2018年から産業用Ethernetが名実ともにメインに
産業用通信・ネットワーク機器大手のHMSインダストリアルネットワークスは毎年、FA分野で新規設置されたノードが、どの産業用ネットワークでつながれているかを調査し「産業用ネットワーク市場シェア動向」としてまとめている。
これをもとに振り返ると、2015年時点では新規ノードにおけるフィールドバスのシェアが66%あったのに対し、産業用Ethernetは34%。約2倍の開きがあった。それが2016年にはフィールドバスが58%、産業用Ethernetが38%となり、2017年にはフィールドバス48%、産業用Ethernet46%と接近。2018年には、ついに産業用Ethernet52%、フィールドバス42%と逆転し、産業Ethernet主流の時代が本格的にはじまる大きな転換期となった。
2019年からは産業用Ethernetの勢いが加速し、逆にフィールドバスはノード数が減る形になり、シェアも産業用Ethernetが59%、フィールドバスが35%と一気に差が開いた。2020年には産業用Ethernetが64%、フィールドバスが30%、2021年は産業用Ethernetが65%、フィールドバスが28%となった。
信頼・安定性重視はフィールドバスを選ぶ傾向も
しかしながら2022年になるとまた少し流れが変わっている。シェアとしては産業用Ethernetが66%と高まり、フィールドバスは27%と下がる結果になったが、これは産業用Ethernetの成長率がフィールドバスのそれを大きく上回っているためで、ノード数全体としては拡大傾向にあり、特にフィールドバスは健闘。新技術よりも実績や安定性、信頼性を求めるケースではフィールドバスが選ばれる傾向が出てきており、産業用Ethernetがさらに拡大するのは間違いないが、場面や環境によって両者を使い分けるという形が見えてきている。
EtherNet/IPとPROFINET、EtherCATの三つ巴の争いへ
ネットワーク別シェアも大きく変化しており、2015年から2017年まではフィールドバスのPROFIBUSがトップシェアだったが、2018年に産業用EthernetのEtherNet/IPが初めて首位となり、そこから今までEtherNet/IPとPROFINETが僅差で争う構図が続いている。またEtherCATがじわじわとシェアを積み上げ、直近の2022年では11%まで高めている。またModbusが最新の工場でフィールドバスのModbus-RTUと産業用EthernetのModbus-TCPを使い分けながら連携させる利用方法で拡大してきているのも注目だ。