製造業もデジタル化の時代になり、製造現場でのデータ活用のためのシステムには今まで以上の高信頼性が求められている。シュナイダーエレクトリックは、製造業など、幅広い産業領域に製品やソリューションを展開している強みや、ITと設備運用の知見を活かし、製造業、特に工場や製造現場向けに強固で信頼性の高いITインフラ環境整備、ファシリティマネジメントの提案を強化している。
停電・瞬電時のデータ破損を防ぐUPS
製造現場のITインフラとその保護というとサイバー攻撃やセキュリティ対策をはじめに想定しがちだが、データの欠損や破壊の原因はそれだけではない。落雷によるサージや停電によって電源供給が止まり、正しくシャットダウンできなかったためにデータが壊れてしまうということは良くある。その対策として有効なのがUPSだが、製造現場での導入はあまり進んでいない。
UPSはデータセンターや社会インフラ、病院等での設置率は100%に近く、工場でも大型UPSは導入されているが、製造現場や生産ライン、生産設備での設置はまだ少ない。いわゆる建屋全体をカバーする数十~100kVAの中大型タイプは普及しているが、装置や工程のシステムのみを保護する数kVAの小型タイプは、サーバーや医療機器など一部用途を除けば、まだマイナーな部類だ。しかし近年、オンプレミスサーバーや、データの利活用のキモとなるエッジ環境にあるエッジPCやIoTゲートウェイの保護に対するニーズが強くなっており、同社はそこに着目して提案を進めている。
ITとOT、ファシリティをカバーするシュナイダー
もともとシュナイダーエレクトリックは、ITのサーバーやデータセンター向けに「APC」ブランドでUPSや精密空調を提供しており、国内外で高いシェアを獲得している。また同時に、プログラマブル表示器やIoTゲートウェイの「Pro-face」、産業用ネットワークスイッチの「Modicon」をはじめとする各種フィールドコンポーネンツからエッジ、ネットワーク機器、さらにはSCADA「AVEVA」等のソフトウェア、EcoStruxureといったIoTプラットフォームまで幅広く産業向けソリューションを展開する総合メーカーでもある。現在、各領域に事業展開している強みを掛け合わせ、UPS提案を進めている。
シュナイダーがCommercial & Industrial (C&I)と呼ぶ、様々な分野のデジタル化を推進するために新たに立ち上げた本部の三室 昭佳Commercial & Industrial (C&I)ビジネス開発本部長は「DXの促進にともない、IT以外の産業でもネットワークの電源とデータ保護が重要視されてきている。病院の患者の受付を行うシステムや店舗のPOSレジ、ネットワークカメラ等では、機器が止まると1時間あたり約1.5億円の損失が発生する可能性があると言われている。UPS導入を薦める場合、多くの産業ではITとファシリティ部門との話し合いで良いが、製造業の場合、そこに加えてOT、製造現場や生産システムを管理する部門との調整も必要となる。当社はOTも含めてすべての部門に対応できるのが強みだ」としている。
DX時代だからこそ現場のIT環境も信頼性が求められる
実際にUPSを導入する製造現場のIT環境は増えてきている。、例えばあるワイン製造工場では、ハイスピードカメラを使った瓶詰めとラベル貼りプロセスをリアルタイムで監視してコントロールするため、クラウドでは通信帯域の要件を満たせないため、オンプレでの監視制御環境が必要とされた。その際、IT環境がない場所にも簡単に専用のITスペースが構築できるマイクロデータセンターと、それを保護するUPS、精密空調等を設置し、EcoStruxure IT Expertでリモート監視環境を実現した。またガラス製造工場でも同様に、リアルタイムでの監視制御と高セキュリティ、高信頼性のIT環境が求められ、上記同様のシステムの構築を行った。
今後について三室氏は「UPSのなかでも、リチウムイオン蓄電池を搭載したUPSのラインナップについて、環境を意識した引き合いも多くなっている。製造業向けには、ITやIoT、エネルギー関連の困りごと解決に向け、インダストリー事業部と協業してワンシュナイダーで取り組んでいきたい」としている。