一度締めたら緩まないのがボルトの利点です。モノを固定するときや製品の組み上げには欠かせないモノですね。しかし頻繁に取り付け取り外しをする用途には、ボルトは必ずしも最適とはいえません。スパナなどを使って何度も回転させなければならないし、工具の取り置きや合わせ作業などが必要になるからです。例えば段取り替えの場合は、金型などを頻繁に付けたり外したりするのですから、ボルトはこの用途には向いていないモノということになります。
しかし型を交換するプレス機や成型機などの設備の構造を見てみると型を固定するのにボルトが使われていることが多いことが分かります。すなわち型交換の時はボルトの数だけ時間と手間を毎回の段取りのたびにかけることになります。そうだとすると、これまではそうだったとしても、これからもずっとそうであると考えてはもったいないと思います。
本当にすべての本数が必要ですか?本数を減らせませんか?
何種類ものボルトが使われているのだとしたら、一種類のボルトに統一できませんか?
ボルトを抜かなくてもちょっと緩めるだけで型を外せるだるま穴式を活用できませんか?
二つのモノを固定できればいいのであればクランプのようなやり方で代用できないでしょうか?
どうしても今のボルトを変えられないのであれば、せめて分かりやすくボルトを色分けできませんか?
などなど、作業時間を減らすボルトについてのいろいろな改善を実行しましょう。
以前、ある自動車部品会社のプレス職場で、段取り替えに関係するすべてのボルトをリストアップしアイデア出しを行ったところ、大小合わせて100件に上る改善が実行でき、段取り替え時間を2割強も短縮できました。
段取り替えにボルトを見たら、改善できる!!と思いましょう。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp/