この数カ月の間に、身近なところで2件のFA関連企業が経営危機に陥り、一社は廃業に追い込まれた。いずれも受注を伸ばしていたが、昨今の納期問題で部材が入って来ず、納品できないため顧客からの入金が途絶え、結果、資金繰りが悪化するというパターンに陥ったようだった。若くやる気があり、自動化やデジタルに関する知識も技術もある社長に率いられ、今後の成長が期待されていただけに残念でならない。
帝国データバンクによると、8/1時点での2020年からのコロナ禍による倒産件数は3813件だそうだ。飲食店や旅館ホテル、建設業、小売業等が多く、製造業は比較的少なめだが、実際には地場の中小FA関連企業を中心に綱渡り状態だという声が聞こえてくる。下請けとして、自動車や電子機器、半導体製造装置、工作機械など大手企業の製品への部品供給や、工場や生産ラインの保守・保全等を下支えしているのは、こうした地場の設備屋やシステムインテグレータ、商社といったFA関連企業だったりする。それが失われたらどうなるか。考えるだけで恐ろしくなる。
多様性の時代と言われるなかで、日本という国がこれからどんな産業や特長で生き残っていくのか。競争が激しく、決して強くないデジタル領域にあえて挑むのか、それとも、地力があり、現在も高い競争力を維持しているFAのようなリアルな製造業を伸ばしていくのか。答えは明白だ。FAやリアルな製造業は、世界規模で確実に需要があり、将来にわたって続いていく。しかもポッと出のライバルも出てきにくい産業でもある。その代わり、いったん技術や基盤が失われたら復活は難しい。
日本のFA・製造業は、地中深くまでしっかりとした根が張っていて、幹は太く、枝は広がり、さらに新たな芽や葉が次々に生まれている。パッと見では分かりにくいが成長を続けているのだ。新しくて派手なものに安易に飛びつくのではなく、これからの競争社会のなかで、日本が勝てる、伸ばすべき産業とは何かを真剣に考えよう。