部材の調達難と納期遅延、カーボンニュートラル、DX。これらは、いま日本の製造業の頭を悩ます3大課題と言っても良い。実際、企業はこれらに対して、どう考え、行動しているのだろうか?6月に日本政策投資銀行が行なったアンケート調査「企業行動に関する意識調査結果」から探る。
調達先の分散と製品の標準化・規格化を優先
材料価格の高騰と調達難、納期遅延は、いま製造業も最もセンシティブな話題。これを解消し、再発させないためにはサプライチェーンの見直しが必須だ。アンケートによると、製造業におけるグローバルサプライチェーンについて見直しを実施・検討している大企業がおこなっていることで一番多いのは「海外仕入れ調達先の一層の分散と多様化」(42.8%)、「製品や調達の標準化・規格化」(31.6%)、「戦略在庫の確保」(29.8%)と続く。
しかし産業によってはその優先度も、機械や電気、輸送用機械といった組み立て製造業では、標準化や規格化が最も多く、調達先の分散・多様化、在庫確保と続く。標準化で部品点数を絞って調達難易度を下げることが最優先で、そこから調達先を広げ、在庫も増やすという考えがうかがえる。
見直しのきっかけ・経緯では、ほとんどの産業で「原材料費の高騰」の割合が大きく、あらゆる産業の部材に価格高騰が広がっていることが分かる。
始まったばかりで対応に悩むカーボンニュートラル
脱炭素・カーボンニュートラルは、この1年で急激に上昇してきたトレンドだ。アンケートによると、カーボンニュートラルが加速することによる事業影響について、大企業では「サプライチェーン全体での対応」(46.4%)、「長期的な移行戦略の策定・開示」(46.2%)、「設備の入れ替え契機」(41.3%)と回答し、中堅企業では「設備の入れ替え契機」(50.4%)、「サプライチェーン全体での対応」(35.4%)、「長期的な移行戦略の策定・開示」(31.2%)の順となった。しかし設備投資計画のなかで脱炭素関連の比率は大企業・中堅企業ともに少なく、「なし」またはあっても「10%以下」にとどまっている。カーボンニュートラル実現時期も、大企業・中堅企業ともに「不明」が最も多く、必要な支援についてはいずれも「補助金」と「税優遇」が圧倒的に高かった。カーボンニュートラルについて取り組まなければいけない課題と認識していても、実際は様子見または検討中であり、生産性向上の設備投資に付帯する形での取り組みにとどまっている。
デジタル化に意欲的な大企業、関心低めの中堅企業
デジタル化・DXは、3つのテーマのなかで最も前向きに、積極的に進められているものだが、実際進んでいるものとしては、大企業・中堅企業ともに70%超が「既存システムの更新」、45%ほどが「情報のデータ化」、40%弱で「全社的なデータ連携」となり、いわゆるIT投資であり、DXまでは先は長そうだ。
またIoTやAI活用については大企業と中堅企業は明暗が分かれ、大企業は「活用予定はないが関心は高い」が38.6%最も多く、「活用検討」(22.9%)と「活用している」(21.6%)と意欲的。一方で中堅企業では「活用予定はなく関心も低い」が41%と最も多く、僅差で「活用予定はないが関心は高い」(37.6%)が続くが、活用検討は14.8%にとどまり、意欲は低めとなっている。
同調査は、足下の重要テーマに関する企業の意識や見通しを把握することを目的として、「設備投資計画調査」の対象企業を対象に、事業見通しやリスク、コロナ禍、地政学リスク、円安等の影響、設備投資、M&A、人的投資などに対する意識についてアンケート調査を行い、資本金10億円以上の大企業1151社(うち製造業488社)と、資本金10億円未満の中堅企業3080社(うち製造業1149社)から回答を得た。