すぐに使わないモノがあれば買い方に、すぐに動かない中間品があれば、造り方に問題があると考えよ。
大事故が起きてしまった後の現場検証で、「明らかに予兆があったのだが誰もそれを正しく認識しなかったので、その結果、今回の大事故につながった」といった分析結果が出ることは多いです。有名なハインリッヒの法則はまさにこのことを言っています。
工場内のモノについても同じことが言えるでしょう。全社的な問題は現場に必ず現れています。ただし、担当者はそれが問題だと気付いていないことが多いのです。あるいはみんなが異常な状態に慣れてしまって、何の疑問も持たなくなっているのかもしれません。
例えば、ある購買担当者は部品を切らさないようにと、早め多めに買うことに罪悪感を感じていません。切れた場合、責任をとれないのだから多めに買っておくことは仕方がないという考えです。別の生産管理者も同様に多めに作っておこうとする傾向があります。もし途中で不良が出たら出荷に間に合わないので多めに造ることは当然という考え方を持っているようです。
彼らに悪気は全くありません。しかし結果として在庫が増えてしまい、場所はなくなり、管理や運搬が増え、キャッシュが減るのですから経営に悪影響が出てしまいます。
すぐ使わないモノが現場にあれば、買い方に問題があります。すぐに動かない中間品や完成品があれば、造り方に問題があります。それらが小さいうちに、早く、現場・現物で発見して改善をしないと取り返しのつかないことになってしまいます。
もっとチョビチョビギリギリに買える方法はないでしょうか?もっと生産ロットを小さくして在庫を減らす方法はないでしょうか? 生産部門だけではなく、調達部門、技術部門、管理部門のみんなが現場で現物を前に議論をしましょう。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp/