令和の販売員心得 黒川想介 (76)画期的商品の出現は望めない 製品から顧客中心へシフトを

国内は少子高齢化やデフレ気味の経済環境下にあり、働く人口の減少で国の勢いは先進国や新興国に比べて弱くなっている。それでも社会は変わっていく。販売店が取引している顧客も当然変わる。その結果、顧客数に変化があるし売上上位の顧客の顔ぶれは変わる。

客先開拓の時代であった昭和とは違って、平成では商品競合による売上の取り合いが激しく行われた。しかし顧客の口座を失うような激しい争奪はそれほど多くなかった。口座が減ったとすれば激しい争奪の結果ではなく状況の変化によって販売員の訪問が減り休眠口座状態となって結果的に口座の抹消となった。売上の伸び悩みが続いていた販売店では休眠口座の掘り起しに再三チャレンジをした。しかしほとんどが成功していない。その理由は販売店によって様々だが大半は販売先をマーケットとして見ないで商品を購入する顧客として見たからだ。販売する機器や部品は人の作業を自動化するオートメーションパーツとして発展し、現在では電気で制御される機械や機器をつくるメーカーや製造現場を持つあらゆる産業に売れている商品である。それで販売員はどの顧客やどの業界にどれだけの売上をあげているかに関心はあるがどんなマーケットにどの位の売上があるのかには関心がない。

その事は多くの販売店がマーケティング的営業に関心を持てない理由の一ツである。機器部品販売店の多くは中小規模である。それにメーカーと違って製品を作らないからマーケティングは必要ないと思っている。しかし令和年間には販売店としてもマーケティング的発想を持って営業をする必要がある。

世間で言われているマーケティングには第一世代から第三世代に移行してきた歴史がある。第一世代マーケティングでは製品を開発して世に出せば需要が発生する。メーカーはその製品の機能を追加して次々と需要を広げてマーケットを作っていくという考え方である。この様に製品中心に考えて開発をするのが第一世代である。製品の機能を追加しても新たな顧客を生み出す力が鈍ってくると第二世代マーケティングに移行する。第二世代では製品の価値は製品の機能が決めるものではなく、顧客がきめるものだという考え方である。それは製品中心から顧客中心への転換である。令和年間には世界の流れが国内社会に大きな影響を与える。社会的公正さとかCO2削減等の地球環境問題のようなことである。これらの社会的ソリューションを背景にしたのが第三世代マーケティングである。機器部品業界は電気制御のある製品や製造現場がマーケットである。したがって一般消費者向けのマーケットと比べると、かなり技術的需要の強いマーケットである。だから新しい商品が生まれると、その商品の機能が次々と追加され新規需要をふやしてきた。

現在でも第一世代の製品中心による需要の喚起は健在である。だから多くの販売店は製品中心マーケティングの考えに立って新商品を広めようとしている。しかし実際には売上が思ったように膨らんでないし、新規顧客をふやす原動力にはなってないようだ。この事実は新しい需要を次々と生んでいた昭和時代のように画期的な商品が出なくなったということになる。したがって販売店は製品中心マーケティングに基づく商品売込みや新規客開拓営業を見直して顧客中心マーケティングの考えに立つ営業へ移行すべきだ。その営業の型とは顧客全体を通観して、顧客の中には様々なマーケットがあることを見つけて各々が何を望んでいるかを探して対処することである。

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