カウンターのお寿司屋さんでは、板前さんが注文通りに握り寿司やお造りを出してくれます。当たり前ですが、注文を受けてから慌ててご飯を炊き始めたり、着替えて魚河岸に魚を買いに行ったりということはありません。あるいは冷蔵庫から前もって握っておいたお寿司を出すということもありません。お寿司屋さんは注文を受けてからあらかじめ用意してある材料を加工して最終製品にしてジャストインタイムで届けるすごい製造業であるといえます。
それから在庫の持ち方も工夫しておられます。すぐに加工できるようにナマの魚を短冊の状態に準備しています。切り方を変えるだけでお造りにしたり握り寿司にしたり自在に対応できます。もしその日のうちに売れなくても翌日のランチのちらし寿司に使えるでしょう。ご飯も大量に炊いてしまうと鮮度が落ちたり余ってしまったりするので、お客様の様子を見ながらちょうど良く少しずつ頻繁に炊いています。
それだけではありません。さらにカウンター越しにお客様と会話をして、その日のおすすめなどを販売促進をしている板前さんもたくさんいらっしゃいます。それはお客様と楽しく会話して、また来ていただけるようなブランド構築もしているといえると思います。
お客様の注文に対してお待たせすることなく商品を提供する一方で、中間在庫を可能な限り材料に近いところで持てば、モノづくりは強くなります。お寿司屋さんという身近なところにモノづくり改善のヒントがありますね。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp/