先日、国際物流展2022の日立製作所ブースで、労働災害のVR体験をさせてもらった。140種類近くの労働災害が実際に体験できるとのことで、VRゴーグルを被り、何やら配線がしてある手袋をはめ、バーチャルな製造現場に没入した後、説明員の指示のもとスタート。実はこれが初めてのVR体験。どんなものかととてもドキドキした。
1つ目の労災体験は「切削油の火災」。切削油を廃棄するために配管のバルブを開けると勢いよく切削油が流れ出し、飛び散って引火。あっという間に炎が立ち上り、目の前が炎のオレンジ色に包まれたところで終了。バルブを開けすぎて想定以上の流量が出たことが事故の原因のようだった。2つ目は「配電盤の取り外し作業」。配電盤の電子部品をドライバで外した瞬間、左手にビリッと電気が走って感電。思わず「いてっ」と声を上げてしまうほどの痛みだった。配電盤のアースを取っていなかったことが原因で、感電の恐ろしさを身をもって体験した。同じシステムで2種類の労災を体験したが、心に残ったのは圧倒的に後者。私は二度と感電したくないので、これからは電気の利用には細心の注意を払うようになるだろう。実体験して、痛みを知り、それによって労災を未然に防ぐことがこのVR労災体験システムの狙いとのこと。まんまと嵌ってしまったが、素晴らしい技術の使い方だ。
労働災害の発生件数は年々減ってはいるが、その一方で製造現場は、設備が老朽化し、事故を知る熟練者が減り、人手不足で一人の作業員がカバーする領域が広がっている。実際は現場の作業員の注意のおかげでギリギリのところで事故を起こさず、踏みとどまっている状態だ。安全技術が進化しているとは言え、現場運用のメインは人であり、事故防止には彼らの安全意識の向上が最も効果的。そのためにもデジタル技術で事故の可能性を下げると同時に、失敗しても良い空間のなかであえて彼らに失敗を経験させ、頭で理解し、肌で感じて、自分ごととしてもらうことが有効だ。