昔から商売は、信用が第一と言われている。店に買いに行くお客様はその店のことを知っている。商品は同じでもその店には安心感があるから買いに行く。その安心感というのが信用である。機器部品の販売店は現在の顧客からの信用を得ている。その信用を得るまでには(一)顧客のことを理解しようと努力し、(二)納期や他の約束ごとを守り、(三)顧客の期待に応えるように研鑽 し、(四)誠実さを持って接し、(五)ミスがあれば誠心誠意を持って対処してきた。信用を得るために以上のような営業活動を長い間つづけてきた。安心して買ってもらうには時間がかかっている。だから販売員が新規の見込客を積極的に訪問して名刺を交換してから顧客のように注文が勝手に舞い込むのはかなり先の話である。
平成の営業では新規客を積極的にふやそうという活動は薄らいでいた。それでも自然に近い形で顧客の入れ替わりがあって売上は世間と歩調を合せて推移した。令和年間はこの業界もそう甘くはない。平成と同様にメーカーや顧客まかせでは持続的売上が伸びないと心した方がいい。どの業界でもそうであるように新規客をふやし続けなければ持続的成長は望めない。これまでも新規開拓はやってきたがあまり成果は見られない。それは顧客数拡大の目標値を持ってなかったからだ。顧客数の拡大と口座数だけではなく顧客の中の部門や技術者の人数の拡大である。令和の顧客拡大は商品を紹介する営業で新規客をふやそうとするのではなくマーケットを探索するつもりで行動することだ。それで次の三ツの切り口で見込客を見つけ接近すればいい。(一)人数の少ないベンチャー企業を訪問する。少しでも情報を欲しているから意外と受け入れる。(二)顧客の中の新しい事業やプロジェクトを見つけて訪問する。ここでは商品売込みせず、情報収集のために当て馬となる情報の準備が必要。(三)顧客の製造現場の中にマーケットを見つけて接近する。例えば高精度画像処理が必要ない目視検査工程は至る所にある。ここには作業者の効率を上げるマーケットがある。
また、製造品目がふえる超多様化生産時代にはコスト的に大掛かりな自動化ができない工程はたくさん存在する。ここに作業者の効率を狙った簡易自動化のマーケットはある。それに生産現場を自動制御でなく自動認識マーケットとして見ると作業者のミス、時間の効率化のマーケットが見える。その他にも生産設備の自動化ではなく工場内のインフラ設備の効率化などのマーケットがある。以上のような工場内マーケットを主管する人や部所はどこにあるのか、従来から付き合いのある生産技術や設備技術に新しい機器部品を紹介しても動いてくれない。社会や技術が変わってくれば同じように見える需要でも問題意を持って取組む主管部所は違ってくるからだ。
それぞれの主管部所は別々のマーケットになるので探してアタックするのが顧客拡大になる。以上の三ツの切り口で比較的容易に見込客に接近できる。しかし一人一人の販売員まかせでは苦手意識があって成果は上らないだろう。こういう場合は一人一人にまかせるのではなくチームでやれば効果が出る。全販売員にこだわらなくてもいいが実行性を上げるには①ちょっと背伸びした目標として新規技術者の名刺の枚数②週又は月単位の進捗会開催③だらだら長期間やるのではなく、短期間の活動にする。等を取り決める。現在の機器部品販売員は(1)あまりにも新規客との名刺交換が少ないことと(2)商品力に頼り過ぎることからの脱出を計らなければ新規客をふやすことはできない、新規客がふえなければ持続的に成長するのは無理なのだ。