工場は付加価値を付ける場所です。原材料を加工して部品にし、部品を組み立てて製品にします。それぞれの工程で、最初の状態に付加価値を付けて次の状態にすることを繰り返します。このようにして工場ではたくさんの部品や製品が作られますが、付加価値が付く時間は意外に短いものです。例えばペンの本体にキャップをはめる組み立て作業では、キャップがはまる「カチン」という音がする瞬間だけで、それ以外は運搬または停滞ということになります。もし付加価値が付く作業だけでモノづくりができたらすごい生産性向上になりますね。
工程全体を見て、もし部品や中間品が多い場合は注意が必要です。自分たちは一生懸命にモノづくりをしているつもりであっても、付加価値が付いている作業時間は極めて短く、モノを移動させたり、使われるのを待っている時間に多くが割かれているかもしれません。
付加価値が付かない運搬や停滞を、なしで済ますことができれば生産性は上がるし、仕事がとても楽になります。例えば運搬は重量や距離によっては大変な仕事であることが多いので改善したいですね。置き場所や設備の位置などの改善で運搬を減らすことができませんか?
停滞については、箱の大きさによっても発生します。例えば、もし部品箱が20個入りであれば、現在使われている1個目の部品以外の19個の部品は停滞中ということになります。そのように見ると、停滞は工場内に蔓延している可能性があります。
しかしもし1個ずつ製品を完成させる1個作りができれば、停滞は材料と完成品に集約することができます。そしてこれができている状態を「流れている」状態といいます。
工場を歩いてモノの様子を見てみてください。これまでは何気なく見過ごしていたとしても、運搬と停滞という言葉を使って改めて現場を見てみると付加価値が付いていない状態が次々と見つかることでしょう。気付くことができれば、どうすればそれを改善できるかを考えて実行する次のステップが自動的に始まるのではないでしょうか。どうぞ頑張ってより多くの流れるモノづくりを実現してください。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら
https://www.kaizenproject.jp/