2022年度グッドデザイン賞 FA・生産財関連からも受賞多数 理想・目的への最短ルートを具現化するデザイン

2022年度グッドデザイン賞が発表された。社会が複雑化し、顧客や市場からの要望も細分化されるなかで、デザインは単なる外見の美しさだけでなく、目的達成への最短距離を進むための手段として重要性は高まっている。
グッドデザイン賞では毎回、FA・生産財関連の製品・サービス類も数多く受賞している。ここではそれらを紹介する。

グッドデザイン金賞にセイコーエプソンの小型射出成形機

セイコーエプソンの小型射出成形機「AE-M3、AE-M10、AE-M3V」が、特別賞のうち「グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)」を受賞した。
同製品は、「小さな部品ほど、製造過程で使われる材料やエネルギーの無駄が多い」という顧客の課題に対して「小さいものを小さくつくる」ことを提案するために作られた小型射出成形機。環境負荷に配慮したコンパクトな部品工場に向けた新しい成形プラットフォームとして、独自のディスクドライブシステムを搭載して小型化と高効率の射出成形を実現した。
いままで大きな工場でやっていたことを、究極的に小型化し効率化することでデスクトップで行えるようにした点が革命的であり、未来の工場の在り方を示唆する提案として高く評価された。

グッドデザイン・ベスト100にファナックの産業用ロボットなど

グッドデザイン賞受賞製品のうち、特に高い評価を受けた100件を選出する「グッドデザイン・ベスト100」には、エプソンの小型射出成形機に加え、ファナックの産業用ロボット 「M-1000iA」、リコーの樹脂判別センサー「B150」、三菱重工業のプラント自動巡回点検防爆ロボット「EX ROVRシリーズ ASCENT」が選出された。


ファナックの産業用ロボット 「M-1000iA」は、1000kgの重量物を広範囲に搬送できる力強さと、カメラによって0.1mm単位で重量物を正確に取出し、位置決めする繊細さとインテリジェンスを兼備。1本アームのシリアルリンク機構では、2つのモータで1軸を回すことでモータを小型化して横への張り出しを最小限にし、ロボットのコンパクト化と上方・後方への動作範囲を拡大。アームは曲面を多用しながら強度・剛性を持たせて軽量化して省エネを実現。さらにベースから手首まで面取りで高剛性と力強いイメージを出し、要所は流線形の共通モチーフで全体の統一感を出した。
圧倒的な重厚感と迫力、従来の大型ロボットでは難しかった広い稼働範囲を実現し、日本の産業用ロボットの底力を見せつけるにふさわしく、これからの産業を力強く支えていく製品として高く評価された。
リコーの樹脂判別センサー「B150」は、屋外を含む過酷なリサイクル現場での使用に耐えられる防塵・防水・耐衝撃性を確保しつつ、持ち運びやすい小型・軽量となっている。スマートフォンと連携し、樹脂に本体を当ててボタンを押せば瞬時に判別し結果を画面と音声で伝達され、誰でも簡単に分別作業ができるようになっている。
専門領域だったプラスチックの分別をコンパクトで手軽にし、身近なものにしたことで脱炭素社会に向けて人の意識を変える提案になっていると高く評価された。
三菱重工業のプラント自動巡回点検防爆ロボット「EX ROVRシリーズ ASCENT」は、石油ガス化学プラントなど引火性ガスのある危険な場所で昼夜を問わず人の代わりとなって点検を行う防爆移動ロボット。プラント内を自動で移動しながら機器の画像、音、ガス濃度等を取得し、安全なLTE通信でクラウドに保存するIoTシステムを備えている。
人が立ち入れない危険な場所で作業するために、自律性、走破性、防爆性の実現を目的に、構造、素材、全てがこうでなければならない、という必然性の塊として設計されており、開発への強い動機と信念が滲み出るようなデザインと高く評価された。

三菱のレーザー加工機やデンソーの協働ロボットなどグッドデザイン賞

このほかグッドデザイン賞には、ワイヤー送給やレーザー出力などの加工条件と軸移動を協調制御し、高品質な三次元造形を可能にしたワイヤー・レーザー金属3Dプリンター「AZ600」と、CFRP加工向けに炭酸ガスレーザー発振器を開発し、加工時に課題となる炭素繊維の粉塵や臭いの飛散に対して全周カバーで収めることで解決し、機能と外観を両立したCFRP切断用炭酸ガス三次元レーザ加工機 「CVシリーズ」という三菱電機の2つのレーザー加工機や、関節部に独自開発のトルクセンサ内蔵小型モータを搭載することで高速・高精度に稼働でき、且つ同じ生産ラインで働く作業者の安心・安全を担保するデンソーウェーブの協働ロボット「COBOTTA PRO 1300/900」、協働ロボット「Cobot IIWA」等と統一性をもたせ、高効率、製造・組立・保守容易なデザインとしたKUKAのパラレルリンクロボット「DELTA SDR 1200」、一段同軸で高減速比を実現でき、バックラッシが小さい減速機として中小型ロボットで広く採用されている製品で、さらに小型軽量化・扁平化してドローン等でも適用可能としたハーモニック・ドライブ・システムズの波動歯車減速装置「ハーモニックドライブULWシリーズ」等が選ばれた。

サントリーの水工場、オムロンの先端FA技術の体験・実証施設も

また建築物として、サントリーの食品工場 「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」は、製造する「水」にフォーカスして、一連のストーリーを空間体験でき、水の価値と環境に想いを馳せることができる工場空間として高評価を受け、オムロンの工場自動化の最先端技術体験・実証施設「AUTOMATION CENTER KUSATSU(オートメーションセンター草津)」は、ファクトリーオートメーション技術を体験・実証できる施設として、生産拠点の只中にあって天井高さを生かしたフレキシブルな空間が、ソリューションをスピード感を持って提供するさまが想像できると評価された。

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