DXが賑やかだが、実際の工場・製造現場には昔からある機械や製造装置が現役で稼働していて、まずはそれらをIoT化したい、見える化したいという声が多く聞こえてくる。しかしIoTをはじめるにしても、PLCが古くて通信機能がない、クラウドやITに詳しい人材がいない、予算が少ないなどの理由で、始めたいけど始められない企業が多いのも事実。それに対しシュナイダーエレクトリックは、IoTゲートウェイ機能搭載のPLC「Modicon M262」を使い、手頃な価格で簡単にできる古い機械のIoT化を展開している。
IoT導入の課題 システムが複雑で高額
一般的に機械の稼働監視などIoT・見える化には、製造現場に設置するハードウェアとして、PLCやセンサから吸い上げたデータを処理するコンピュータと、そのデータをクラウドなどITシステムに上げるための通信ゲートウェイが必要となる。さらにIT側でデータを処理する基盤として、クラウドまたはオンプレサーバ、見える化のためのダッシュボードなどのIoTソフトウェア・アプリケーションを揃えなければならない。
IoTが簡単ではない、大変でお金がかかるというのは、IoTの構成部材がハードウェアとソフトウェア、ITとOTにまたがり、しかもそれらをうまく調整してひとつのシステムにしなければならないためと言われる。IoTを手軽に使えるようにするためには、これらをもっとシンプルで簡単に安くしなければならないのですが、なかなかできていないのが実情だ。
特に通信機能を持っていないような古くてレトロな機械や装置の場合、さらに必要な部材や改修箇所が増え、よりシステムが複雑になります。それにともなって投資金額も高額になり、結局は費用対効果に合わないので今回は諦めるというケースが多々ある。
MCプロトコル対応 レトロな機械を簡単にIoT化
そうした課題に対し、シュナイダーエレクトリックが提案するのが、IoT機能搭載PLCである「Modicon PLC M262」を使ったレトロな機械のIoT化だ。
Modicon PLCは、シュナイダーエレクトリックがグローバルで展開するFA機器ブランドで、PLCシェアでは世界トップ5に入るほど広く使われているPLCとなる。M262はグローバルでは昨年から販売しており、日本ではその特長を活かし、OTとITをつなぐIoTゲートウェイとしての利用促進に向け、日本国内市場向けに独自のカスタムを施して発売を開始した。
M262は、三菱電機のPLC(シーケンサ)の通信プロトコルであるMCプロトコルに対応し、三菱電機のPLC・シーケンサで動いている機械であれば、M262を接続するだけでPLCから生のデータを直接吸い上げることができる。データを取得するためのプログラムを作る必要はなく、WEB設定画面から簡単な設定をするだけで連携してデータ収集が可能となっている。それ以外のPLCやコントローラに関しても、Ethernet IPやModbus TCPに対応しているので簡単に連携して必要なデータを収集することができる。
また、標準搭載しているWEBサーバー機能でPLCの遠隔監視も容易に実現できるという特長がある。
MQTT、OPC UA等にも対応 IT・クラウドとの接続も容易
また上位との連携でも、HTTPS、MQTT、JSONといったクラウド通信プロトコルに対応し、クラウドとの接続も簡単。さらにOPC UAにも対応し、IT側ともスムーズに連携することができる。製造現場の各機器とつながるPLCでありながら、クラウドやITとの接続・通信機能も兼ね備え、IoTに必要な要素を1つに詰め込んだIoTゲートウェイとなっている。
さらに、Ethernetの接続ポートは3口あり、独立2系統のネットワークに別々に接続が可能。制御と通信で別々のCPUを積んでいるため、制御と通信、ITとOTのネットワークを完全に分離して動作させることができる。これにより必要以上にCPUへの負荷が高くなる心配がなく、さらに別々で動くのでセキュリティも高く、安心して使うことが可能となっている。
M262を使うと、製造現場の機械や装置のPLCから生のデータの吸い出しから、取得したデータの一次処理、クラウドやITとの接続を1台ですべてカバーでき、システム構成がシンプルにできる。さらにプログラムレスなので設定工数も減らすことができ、装置の立ち上げまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
クラウドも見える化システムも通信も、すべてまとめて提供可能
加えて、同社はIoTデータ活用基盤「Ecostruxure」とクラウド遠隔監視ソリューション「Machine Advisor」、産業向けのセキュアな通信サービス「Pro-face Connect」を揃え、データの収集から通信、クラウドまで、IoTに必要な環境を1社ですべて提供することが可能。
シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 商品企画部 PLC・モーションコントローラー製品担当の熊谷 毅氏は、「IoTの課題は、PLCとクラウドをつなげるゲートウェイは、機器自体がそこそこの値段がする上、PLCとデータをやりとりするためのプログラムも必要になる。しかもそれを作成するためのエンジニアリングソフトも有料なので、思っている以上に費用がかかる。M262単体は10万円からハイエンドのものでも20万円程度。プログラムレスなのでエンジニアリングのためのソフト購入もいらないので、IoTを手軽に始めるにはちょうど良い。また当社はセンサやPLC、ゲートウェイ、クラウド、通信、個別アプリケーションまで一通り提供している。それぞれ個別に依頼・調達すると事務処理の手間やシステム構築で時間も費用も膨らむが、必要なものをすべて提供できるのでメリットはある」としている。
主要メーカーのPLCプロトコル対応も計画中
現在、MCプロトコル対応、PLC・IoTゲートウェイ一体型の特長を活かし、古い加工機械や生産設備のIoT化、レトロフィットへの提案を強化している。さらにオムロンやキーエンスなど主要メーカーのプロトコル対応も計画しているという。
「Pro-faceブランドのHMIで認知度の高い当社の国内FA部門は日本のシュナイダーエレクトリックにおけるインダストリー事業部の前身である株式会社デジタルの技術力がベースとなり、『なんでもつながるHMI』を開発・提供してきた土台がある。今回のMCプロトコル対応のM262も、これまでの技術を活かして日本法人が国内市場向けにソフトウェアを開発したものとなる。さらに開発を進め、既設の機械のIoT化に貢献していきたい」としている。