2022年もあと半月ほどで幕を閉じる。今年も多くの人に会い、話を聞き、技術や製品を見て、記事にした。取材は私からお願いしたケースもあるが、一方で企業やPR代理店等から多くの問い合わせや取材や記事掲載の依頼をいただいた。これまであまり情報発信に熱心ではなかった、取り組んで来なかった企業が広報活動を開始したり、とにかくイケイケで何でもいいから露出を増やしたい、知名度を上げたいという企業の動きが目立った。
広報活動が活発になったことは、発信される情報が増えたという意味では喜ばしいことだ。しかし一方で情報の中身や質については雑多で安易、企業の自己中心的な情報が増えたという印象だ。たとえばSNSを使った広報活動はここ数年で非常に活発化しているが、そのなかには単にバズって知名度を上げることを目的としたもの、目的が不明なもの、逆に企業イメージを下げてしまうようなものも散見される。またプレスリリース配信サービスが充実したことで多くの企業がそれらを使って自社情報の発信を行なっているが、受け取る側、見る側のことを考慮せず、自社の言いたいこと、アピールしたいところだけを盛りまくり、結果として何が言いたいか分からない、雑多で信頼度が低く、強い自己顕示欲が臭ってくるものに当たるケースが増えている。自社を知ってもらいたいという意欲は買うが、逆にそれが空回ってしまっては意味がない。特にBtoB、製造業、生産財、FAのような信頼性や安全性が求められる領域では尚更だ。
以前、ある人から「広告はお客様や社会に対するラブレターのようなものだ」と言われ、必要以上に飾らず、相手への好意と自分の良さを誠実に伝えることが大事だと教えられた。広告ほどピンポイントに精度を求める必要はないが、これは広報活動にも通じる話。広報は自社に有利なビジネス環境を構築するために重要な役目であり、社長と並んで「会社のカオ」でもある。広報活動に力を入れた方が良いのは当然のことだが、SNSや動画など安易に手段へと走るケースが目立つ。「見せ方・見え方・見られ方」戦略的に取り組みことが大切だ。