日本の製造業は成長しているのか、衰退しているのか。拡大しているのか、縮小しているのか。その規模はどれくらいなのか。明確な基準をもとに数字を示し、定量的に見ていかないと意味がない。そこで「数字で見る日本の製造業の現在地」として、日本の製造業人口、出荷金額など日本の製造業の規模を示す基本データとその全体傾向をまとめた。
日本の製造業で働く人の数を表す「就業者」は、2022年10月末時点で1053万人(総務省統計局 労働力調査2022年10月分より)。全就業者数6736万人の15.6%を占めている。前年同期は1044万人だったので9万人増加となった。年による増減はあるが、全体として緩やかに減少している。
全国にある製造業の事業所を示す「事業所数」(従業者4人以上)は、2020年は17万6858カ所(経済産業省 令和3年経済センサス‐活動調査より)。前年は18万1877カ所(経済産業省 工業統計調査)で若干のマイナスになっているが、元となるデータが異なるので単純比較は不可。それでも傾向としては年々減少を続けている。
メーカーが製造して出荷した金額「製造品出荷額」は、2020年は302兆33億円(経済産業省 令和3年経済センサス‐活動調査より)。前年は322兆5334億円(経済産業省 工業統計調査)で若干のマイナスになっているが、元となるデータが異なるので単純比較は不可。20年はコロナ禍が直撃したタイミングで前年から若干沈んでいるが、それでも300兆円超えはリーマンショック直後の2009年、東日本大震災直後の2011年を上回る規模で、基盤となる地力は強化されている。
日本で製造したものを海外に出荷した金額「輸出額」は、2021年は83兆914億2000万円(食料品や原料品等も含む)。2019年と2020年はコロナ禍で輸出が滞ったので比較できないが、その前の2018年(81兆4787億5300万円)に比べると1兆6126億6700万円の増加。それまでも年々増加しており、右肩上がりの傾向にある。
日本の製造業がどれだけ稼いだかを示す「製造業GDP(名目)」は、2021年度は113兆4092億円(2021年度国民経済計算年次推計より算出)。日本の全産業の名目GDPは550兆5000億円で、このうち20.6%を製造業が占めた。
総じて、日本の製造業で働く人の数、事業所数の数は年々減少傾向にある一方、出荷額、製造業GDPは微増を続けている。
成長が著しい新興国と比較すると成長率では見劣りし、単年の数値の増減ばかりを見ていると停滞しているように見えるが、現実の日本の製造業は、減っていくリソースのなかで生産と出荷を増やして売上高を増やし、輸出の拡大によって縮小する国内市場から海外市場へのシフトも進んでいる。市場の動きも個々の企業もこの流れに沿って動いており、大きな潮流では着実に基盤を強くしていることが見て取れる。
今後さらに成長をしていくためには、国内の人手不足が好転する未来は難しいので、よりいっそうの自動化・省人化を進めて生産性を高めることと、直接輸出または海外での売上を増やすこと。その一方で国内市場に対しては、従来のもの売りに加え、付加価値のあるサービス提供も含めた新しい収益源を見つけ育てることがポイントになる。