【2023年 年頭所感】一般社団法人日本産業機械工業会 会長 斎藤 保 アフターコロナ時代を見据えた日本経済の持続的成長に向けて

2023年を迎えるに当たり、新年のごあいさつを申し上げます。

皆様には、気分も新たに新年を迎えられたことと思います。

昨年を振り返りますと、北京冬期オリンピック・パラリンピックでの日本選手の活躍や、カタールで開催されたサッカーワールドカップでの日本代表の果敢な戦いぶりは、新型コロナ禍で疲弊していた我々に、勇気と感動を与えました。

昨年の世界経済は、欧米等においては、コロナ禍からの急激な経済回復から、景気の過熱状況が生じ、政策当局は、大規模な金融引き締めを継続して実施しました。

また、この需要の急激な拡大や、それ以前からの脱カーボンの推進により、資源エネルギー原材料の需給は逼迫し、価格の世界的な高騰が見られました。そこにロシアのウクライナ侵攻と、それに伴う経済制裁やその反抗により、この資源エネルギー、原材料の需給逼迫、価格の高騰は、厳しさを増しました。

更に、中国におけるゼロコロナ政策、都市封鎖の実施は、中国経済を停滞させ、世界のサプライチェーンをより脆弱化させる事態となり、世界経済のリスクを拡大させました。

今年の世界経済は、欧米等の急激な金融引き締めによる景気後退リスクの高まりや、中国におけるゼロコロナ政策が急激に緩和されたことに伴う社会経済の混乱といったことから、下振れリスクを強く感じさせる状況といえるでしょう。

我が国においては、欧米等に遅れながらもウィズコロナへと舵を切った一年でした。輸出や生産が持ち直していく中で、景気は緩やかに回復していきましたが、エネルギー・資源価格の高騰や半導体をはじめとする部材不足などは、企業の事業活動に大きな影響を与えました。

また、電力需給の逼迫により、今冬は7年ぶりに節電要請が実施されているなど、日本が抱えるエネルギー構造の脆弱性が映し出された一年でもありました。

一方、2022年度上半期の産業機械受注は、受注総額が2兆6,190億円と内需・外需ともに前年同期を上回る回復が続きました。国内では製造業を中心にコロナ禍で先送りされていた設備投資が再開され、海外では欧米をはじめ、アジア、中東などでの需要が堅調に推移いたしました。特に、半導体やEVバッテリーなどに関連する化学機械やプラスチック加工機械、運搬機械等の分野において伸びが見られました。

さて、2023年は、半導体等の部材不足、電力料金の高騰などの課題が継続している一方で、グリーン・トランスフォーメーション(GX)や、デジタル・トランスフォーメーション(DX)への対応が更に進展する、我が国にとって正にターニングポイントの一年になると考えます。

特に、GXは、年末に政府がまとめた「GXの実現に向けた基本方針案」において、今後10年のロードマップが示されています。水素・アンモニアについては、制度構築やインフラ整備を進めるとともに、大規模かつ強靱なサプライチェーン構築への支援が示され、原子力発電に関しては、着実な再稼働や運転期間の追加的な延長、次世代革新炉の開発・建設が検討されることとなっています。

そうした中、我々産業機械業界としては、水素、アンモニア、CCUSなどの脱炭素・低炭素に関する優れた技術や製品、サービスを広く提供していくことにより、我が国のみならず世界の脱炭素に向けて、一層の貢献をしてまいります。

政府におかれましては、コロナ禍からの回復途上にある我が国経済が失速することのないよう、各種施策を着実に実行していただくとともに、エネルギーの安定供給や、国内投資拡大のチャンスとなるGX・DXの推進といったアフターコロナ時代を見据えた日本経済の持続的成長に欠くことの出来ない中長期的な課題に対して、スピード感をもって取り組んでいただくことを期待しております。

年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

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