良い意味で裏切られたのが、現在放送中のNHKの朝の連続ドラマ小説「舞い上がれ」だ。はじめは、女性がパイロットになる夢を追うストーリーだと聞いていたが、いつの間にか実家のねじ製造の町工場を苦境から救い、発展させる物語へとすり替わっていた。通常なら非難の嵐にさらされそうな紆余曲折ストーリーだが、人間や家族ドラマを絡めることで視聴者を惹きつけ、うまく乱気流を抜け、安定した飛行を続けている。
いま物語は、リーマンショックによる業績悪化と社長である父親の死去に端を発した倒産の危機を乗り越え、新規分野となる航空機産業への参入を目指して奮闘中だ。航空機産業への参入は亡き父親、先代社長の夢。それを会社一丸となって果たそうとしている。しかし要求される技術的ハードルは高く、未経験の主人公らは悪戦苦闘したが、近隣の町工場仲間の協力を得てなんとか試作品が完成。品質検査を経て本格参入できるかどうかの瀬戸際に来ている。この原稿が世に出る頃には、その結果が出ている頃だろう。さてどうなっている事やら。
フィクションと言ってしまえばそれまでだが、奮闘する主人公たちの姿は、製造業やものづくりに対する敬意と愛情が感じられ、現実の製造業の姿と重ね合わせると朝からグッとくる。製造業たるもの、技術を以て新領域に挑戦し続けることが大事であり、それをクリアすることで道が拓けることや、倒産寸前で人員整理した時の話では、製造業・ものづくりが多くの人々にとって収入源として生活の基盤となっており、それが弱体化すること、無くすことは彼らの生活を脅かし壊すということを気づかされ、改めて気が引き締まる思いがした。たかが朝ドラ、されど朝ドラ。毎朝の15分だが、楽しみと学びをもらっている。3月31日の最終回までに波乱はまだまだありそうだが、町工場、製造業で頑張る人々の姿から目が離せない。