守って勝つ戦もあれば、せめて勝つ戦もある。守って勝つには相手が勝手に自滅しない限り、守り切った上で反撃に転じなければならない。そういう意味では、やはり勝つには侵攻しなければならない。
営業戦線においても然りである。顧客の顔ぶれがあまり変わらないということは、顧客を守って予定売上を達成しているということだ。顧客を守って予定売上があるうちはいいが、頑張っても予定に達しなければ反撃に転じて攻めなければならない。反撃をするには余力を残し守り切らなければならない。余力を残し守り切るということは、販売員がその顧客に心底信頼されているかどうかという意味である。
顧客は普段から販売員をよく見ている。販売員が顧客からどのように見られているかを知るには、その顧客に他の技術者を紹介してくださいと依頼すれば信頼関係の度合いが分かる。
①言われた事を真面目にやっていて、特に不都合はないが、なかなか紹介してくれない場合は、どこか頼りないと思われているか、親しみが感じられないという評価になる。
②一応、他の技術者を紹介してくれるが同じ部門の同僚の範囲を出ない場合は、商品情報の提供や都度のサービスをそこそこにこなして一定の期間を経て親しみを感じているという評価になる。
③他の部署の技術者をの紹介を依頼した時に面倒くさがらず骨を折って探したり、折衝してくれる場合は、心底から信頼されているという評価になる。
令和年間でも予定売上を達成し続けるには、顧客を守り、顧客頼りの営業に力を注ぐだけでなく、現状から反撃に転じなければならない。反撃とは顧客内のいたるところにいる沢山の技術者にタッチして、顧客にする事に他ならない。反撃する時に足がかりになるのが紹介の依頼であるから、日ごろの顧客との付き合い方がいかに大事かが分かる。
紹介をしてもらうには②か③レベルの信頼が必要になる。しかも他の部署のような新しいマーケットへ進出したいと思うならば③のレベルの信頼を得ていないとはぐらかされてなかなか紹介してもらえない。一般的には、日常の営業活動を通して顧客からの信頼は上がっていく、しかし②の信頼レベル段階で足踏みしてしまう。ここを突破して③の信頼レベルまでになるには情報が関係する。
営業が日常的にやっている情報活動といえば、商品関係の情報提供と案件テーマ情報の取得である。受ける顧客側は、積極的にアプローチしてくる営業をどのように見ているのか。営業には売り込む一面と情報をもたらしてくれる一面があると思っていて、煩わしい売り込みを容認するのは、営業が持ち込む情報があるからなのだ。役に立つ商品情報は理想的だが、そんなに多くあるものではない。顧客は仕事をする上でやりやすくなる情報、ヒントになる情報、視野が広がったり、面白い情報を歓迎するのだ。
ところが機器部品販売員の情報活動は、情報の提供というよりは戦闘そのもののような売り込み活動になるために営業を快く受け入れないのだ。それでも付き合いが長く、友好的である顧客なら、ごくたまに商品情報が役立つこともあって熱心さを買ってくれる。それをよしとしている販売員は信頼②のレベルを突破できない。顧客が営業に求める情報は、顧客の立場や興味の範囲によって様々であるが、言えることは前述したように顧客の仕事に関することであり、営業が持ち込む商品というわけではない。それらのことを知るには普段の営業が「売らんかな」という気持ちで接していてはダメだ。顧客はいい仕事をしようとしてチャレンジしている。だからその辺の情報を知ろうとする気持ちで接しないと信頼③のレベルにならない。