中国の故事で 兵は神速を尊ぶ という言葉がある。神速とは神業のようにものすごく速い様子を表し、戦に勝利するためには速く決断し、速く移動して攻撃に移ることが重要だとされている。しかし神速も使い方を誤れば単に速いだけの無謀な突撃になりかねない。重要なのは確かな情報と、それに基づく神速だ。
納期問題への対策ではメーカー間で明暗が分かれた。あるメーカーはギリギリまで納期問題そのものを後ろに倒すことに成功し、他メーカーのシェアを奪い取った。いち早く危険情報を察知し、対策をとったことが功を奏した。別のメーカーは腰が重く、対応が後手に回った。命運を分けたのが、顧客の情報だ。前者はユーザーと密な関係を築き、必要量とスケジュールを正確に掴み、早い段階から部材の発注をかけて生産を継続して在庫を作っておくことができた。
この生存競争が激しい時代、市場は靄がかかってアクセルを踏むのを躊躇してしまう。ましてや神速なんてもってのほかだ。しかし目線を身近なところに向ければ多くの情報が転がっている。状況を打破するにはいかに丁寧にそれらを拾っていけるかに尽きる。「作れば売れる」ではなく「売れるから作る」時代、ヒントは現場にある。お客さまのところへ足を運び、情報を得て、対応する。現代の神速のポイントはそこにある。