前回のコラムではFA機器の納期問題についてでしたが、製造業にとってエネルギー価格や原材料費の高騰も大きな問題です。
今回は「エネルギー価格の高騰」についてです。
まずエネルギー価格の高騰といえば、真っ先に思いつくのが電気料金ではないでしょうか。
電気料金の明細を見て驚いたという方も多いはずです。私も驚いた一人。
自宅の電気使用量を昨年の同時期と比較しますと、使用量が減っているにもかかわらず、月の電気代は5000円~1万円ほど増えていました。
私の周りには2万円増えていたという方もいらっしゃいましたので、私はまだ少ないほうかもしれません。
そんな高くなった私たちの毎月の電気料金には一般家庭、工場ともに「燃料費調整額」という変動する化石燃料エネルギー価格が反映されており、毎月上がり続けています。
私は会社員として生産技術の傍ら、エネルギー管理の業務をしており、工場の省エネ活動をはじめ、毎月の電気、重油、水などの各エネルギー使用量と請求金額も確認しています。
工場の電気使用量は一般家庭とは異なり、使用量が断然多いため、値上がりの金額も大きく、
こちらも驚きを隠せません。
具体的な金額は申し上げることはできませんが、年間で前年の約2倍、数千万円増えています。
省エネ活動による電気使用量の削減、補助金制度の活用など、電気代削減に向けて対策をしているもののとても厳しい状態です。
正直なところ、省エネ活動の意欲がなくなる気持ちになりますが、省エネ活動をやめるわけにはいきません。
さらに、追い打ちをかけるようにエネルギー価格だけではなく、製品を作るための原材料費もあがり続けているので生産原価をより押し上げています。
なぜ、ここまで高騰しているのでしょうか。
経済産業省エネルギー庁から報告されている「エネルギー白書2022」を見ながら確認してみました。
まず電気代が高騰している原因は、化石燃料エネルギーの価格の高騰です。
残念ながら日本の電気の約7割が火力発電であり、さらに発電の約4分の3を輸入の石炭、天然ガス、石油に頼っています。
ここ数年の価格高騰の理由として、「新型コロナ感染症によって減速した経済活動の再開」、
「ロシアのウクライナ侵略により、ヨーロッパ諸国がロシア以外からの天然ガス、石油、石炭の調達」が挙げられます。
さらに日本では原子力発電所が停止しており、火力発電の割合が増えている状態です。
日本の原子力発電は、世界で4番目の設備能力を有していますが、原子力発電の発電電力量に占めるシェアは、2010年度に25.1%でしたが、2020年度は定期点検等による各機の停止が重なったことから3.9%と低かったです。
私個人としては、安全対策を進めながら原子力発電の稼働を増やしてほしいと思いますが、各原子力発電所で運転差し止めの裁判が起きていることなどもありすぐに再稼働することは難しいです。
直近では2月10日に政府が原発推進への政策転換を閣議決定したので、この先どう変わっていくのか注目です。
仮に原子力発電所がすぐに再稼働しても、各電力会社は原子力発電の稼働を前提に電気料金を算出しているため、電気代はすぐに安くならないと思いますが、少しは期待したいですね。
今回は暗い話題になってしまいましたが、世界的な問題が電気代に映し出されており、化石燃料不足による燃料費高騰の影響は、2023年も続くと考えられています。
また、2023年4月には大手電力会社の多くが一般家庭向けの電気料金(規制料金)の値上げを発表しています。
いったいどこまでエネルギー価格の高騰は続くのでしょうか。
出口が見えずに不安ですが、いつか落ち着くことを信じて今は無理のない範囲で節電し、耐え忍ぶしかないです。
著者プロフィール
シマタケ
共働きの子育て会社員。工場で15年間働く電気エンジニア。現在は某製造メーカーの生産技術担当。エネルギー管理士、第3種電気主任技術者、第2種電気工事士
機械保全技能士電機系2級、工事担任者(現DD第1種)、2級ボイラー技士、消防設備士(乙6、7)、危険物取扱者(乙4)など多数の国家資格を取得。心理学を勉強中でメンタルケア心理士、行動心理士も取得。
「電気エンジニアのツボ」でブログとYoutubeで情報を発信中