データ活用による売上増加効果
先行き不透明な時代、製造業に限らず、あらゆる産業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要であるとされるなか、実際のところの進捗具合はどうなのか?IPA(情報処理推進機構)がまとめた「DX白書2023」によると、デジタルは進みはじめたが、価値創出やビジネスモデルの変革といったトランスフォーメーションは不十分でこれからとまとめた。
DX取り組みの効果
日本企業のDXの取り組み状況について、543社の経営層、ICT事業部門、DX関連事業部門から回答を得たアンケート調査によると、21年度は取り組んでいる企業が55.8%だったのに対し、23年度は69.3%に上昇。このうち全社戦略として取り組んでいる割合が54.2%に上り、経営の方向性としてDXに舵を切っている。
成果については、成果が出ているとの回答が58%に達し、21年度から10ポイント増加。成果が出ている内容は、「アナログ・物理データのデジタルデータ化」が76.1%、「業務効率化」が78.4%に達し、データ収集と分析からの業務改善では成果が上がっている。一方で、新製品やサービス、価値創出では十分な成果が出てきていない状況だ。またデータの利活用による売上増加に対する影響について、50%近くの企業が成果測定をしていない。
DX人材については、「不足している」企業が75.4%となり、21年度と比べると、大幅に不足しているの割合が高くなった。DXの取り組みが具体化するとともに、必要なスキルと人材が明らかになり、不足感が増している。
また、同じアンケートを米国企業でも実施しており、米国企業ではDXに取り組んでいる企業は77.9%と日本よりも少し高めだが、全社的に取り組んでいる企業の割合が高い。成果については89%が成果が出ていると回答し、内容も新製品サービス創出や価値創造まで到達している企業割合が多い。
日米で最も明暗が別れたのが、売上増加に対する効果。日本では半数以上が成果測定していないの対し、米国で成果測定していない企業は10%未満。成果を見ながらシビアに取り組み、接客サービス、営業・マーケティング活動、問い合わせ対応、製品・サービス開発、製造工程、ロジスティクス、サプライチェーンのいずれの業務・工程でも6割近くが売上増加効果を感じ等れている。
DX白書は、2009年の「IT人材白書」、17年の「AI白書」の要素を継承しながら、DX戦略の視点を加えたものとして21年に「DX白書2021」として発行。第2弾として、国内DX事例の分析に基づくDX取組状況の概観、日米企業アンケート調査結果の経年変化や最新動向、DX推進への課題や求められる取組の方向性などについてまとめている。