学生の時に運転免許を取り、運転歴はもう30年になる。ゴールド免許には手が届いていないが、大きな事故もなく、快適な自動車ライフを過ごせている。その理由はやはり自動車学校や免許更新時に警察から繰り返し言われた「かもしれない運転」を心がけたからだろう。交通ルールやマナーがあるとは言え、リアルな現実世界では突発的に何が起こるか分からない。「かもしれない」の意識を常に頭の片隅に持っていたことで回避できた事故は数え切れない。
かもしれない運転の反対が「だろう運転」だ。まわりの状況を自分の都合の良い風に解釈して運転する。だろう運転のデメリットは、周囲の変化に鈍感で、頭のなかで発生しそうなことの選択肢を持つことができないので、想定外のことが起きると咄嗟に対応できない。気づいた時には状況は悪化していることが多く、それを取り戻そうとして焦った結果、連鎖的にミスを繰り返すなんてケースもよくある。何事も、心持ちは謙虚に、視野を広く保ち、そして事前準備やシミュレーション、何か起きるかもしれないという選択肢を豊富に持っておくことが重要だ。
DXブームによって多くの経営者がデジタル技術の導入と、それによる業務改善に力を入れている。それはもちろん大事なことだが、その一方で直近の課題解決に没頭しすぎて足元ばかりを見て満足し、周囲の環境変化に鈍感になっているケースがいくつか見受けられる。自社と同様に顧客もそれぞれにDXや経営改革を進め、ビジネスと意識を大きく変えている。
そこをしっかり把握しておかないと、自社が変革を進めていたとしても、気づいたら顧客や市場は全然違うところに行っていたなんてことになりかねない。いつまでも取引先が変わらずにいることはあり得ない。だからこそ、いままで通りで大丈夫だろう、あそこは発注してくれるだろうという思い込みは危険であり、この変革期だからこそ顧客と市場の変化に敏感にならなければならない。
彼らの変化、新しいチャレンジに対し、どう自社が追従し、貢献できるかが最優先であり、それを実現するために有効なのがデジタル技術の導入なのだ。その優先順位を間違えてはいけない。