好きこそ物の上手なれということわざがある。
好きなことは他人に言われなくても一所懸命やるので上手になるということだが好きなら必ず上手になるというのではなく将来の上手につながるという意味である。上手になるにはそこにチャレンジが必要不可欠である。機器部品販売員が一番苦手としているのが新規客開拓である。これにチャレンジしなければ営業が好きだと言っても上手にはなれない。現在の新規客開拓事情をを見ると商品の件で新規客から問い合わせがあって出向く営業やMA(マーケティングオートメーション)手法で新規客を見つけ出向く営業である。新規客の方から接近してくれば商品売込み営業から入れる。MAの網に引きつけられる新規客にも商品売込み営業から入れる。こうした新規客開拓のやり方は販売員がわずらわしいと思う活動が省けて時間効率を上げるものである。しかし効率が上り便利になれば失うものがあるのが世の習いである。営業も同様である。
効率的にセールスの情報を入手して新規客開拓をしていれば自ら顧客を発見し作って行く営業力は育たない。現在自らの手で開拓をするには紹介依頼が王道である。営業経験の長い販売員は自分の顧客に紹介を頼めば大方は紹介してくれるだろう。
しかし新規客をふやそうという開拓魂が弱くなっているために積極的な紹介依頼から遠ざかるようになる。仮に紹介されたとしても実際にはよくわからない新規客が相手であるから慎重に接近していかなくてはならない。その際のアプローチ力も育たない。それに効率よく商談情報をもらって新規客にアタックするために商品を売り込む力は磨きがかかっていくが顧客やマーケットの実際を見抜く力は育たない。
人間は便利になって筋力をあまり使わなくなると弱くなった筋力を復活させるためスポーツジム等で汗を流す。営業も筋力と同様に弱くなった営業力を鍛え直さなければならない。機器部品営業が失ってはいけない営業力は新規客へ接近して顧客にするまでのコミュニケーション力と顧客やマーケットを見る情報感度である。もっとも営業の重要な使命は売上獲得だから受注までのプロセスを効率化するのは悪くない。だが当然商談を決めた後でその後に顧客化できないのが問題だ。
いくら商品売込みがうまくても受注後に用件やテーマ情報等が続かないとその新規客と切れてしまう。これはビジネスコミュニケーション力の不足のせいである。ビジネス上の会話の糸口を見つける事や会話の応酬がちゃんとできてないのだ。営業はコミュニケーションが付きものだとは誰も知っている。だからコミュニケーション不足だと言ってOFFIJTでコミュニケーション力を学んでも効果は薄い。ここはやはり日々の営業実践を通して身につけることがベストである。
ビジネスコミュニケーションは用件や売込み時の事務的なやり取りではなく、互いにいい仕事をするために情報をやり取りする事が主である。だからと言って技術者向けのむずかしい話題で会話することではない。知識の浅い若手の販売員なら用事で顧客を訪問する際に設計や現場の技術は今日一日どんな仕事をするのかという関心を持って会話を仕掛けることだ。これを毎日やっていれば技術者の動きや関心の在り処がわかる。少しわかれば疑問が湧くしもっと知りたくなるだろう。それを続けることによって技術者をその間でビジネスコミュニケーションをするための基礎的知識をつけられる。設計や現場技術者の仕事に関係する基礎的知識が身につけば緊張する新規客相手でも商品の説明から入らず接近して行くことができるのだ。