グレート・ムタの成功に学ぶ 得意を生かした異質化・特異化

プロレスが好きな人以外には興味がない話かもしれないが、世界最大のプロレス団体WWEの殿堂入り(Hall of Famer)にグレート・ムタが選ばれた。4月1・2日に行われた年に1度のWWEの祭典「レッスルマニア39」にも登場し、8万人以上の大観衆から祝福を受けた。

グレート・ムタは、先日現役を引退したプロレスラー武藤敬司による別キャラクターで、顔にペイントをして、毒霧を吐く異様なレスラーとして1989年にアメリカに登場し全米で大人気を博した。90年代以降も日米をまたいで活躍し、後進のレスラーにも大きな影響を与え、レジェンドとされている。

人気となった理由はいくつもあるが、ひとつ大きなものに「異質性・特異性」がある。もとはニンジャをモチーフとし、オリエンタルな雰囲気をまとって西洋の文化に東洋のエッセンスを持ち込み、さらに身体能力を活かした軽快な動きで見るものに驚きを与え、他のレスラーとは明確な一線を引いた。さらに、年を経るごとに東洋のニンジャから魔界の住人と進化して、日本でもアメリカでも世界でも唯一無二の存在となっていった。

いまグローバル化や標準化によって世界の製造業は均質化の方向に向かっている。市場はレッドオーシャンで、この流れにそのまま乗っかっては勝ち目は薄い。日本は極東の島国として大陸とは異なる歴史・文化や習慣を育んできた。そこから生まれる視点や発想は世界から見れば異質なもので、製造業もかつては欧米を真似をして取り入れたものに日本的なエッセンスを加えて新たな価値を生み出した。いま必要な視点は、他者との差別化ではなく、自らの得意を生かした異質化・特異化。強みを強さとして発揮することだ。

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