モノづくりの歴史を振り返ると、まだモノが十分に行き届いていないときは、作ればすべて売れてしまうような状態で、プロダクトアウトと呼ばれていました。しかし競争が激しくなりお客様のご要望に応えようと多くの企業が工夫をし始めると品種が増え、売れはするけれどどれが売れるかは分からない時代に変わりました。この時代はマーケットインと呼ばれています。
しかしその時代も更に変化していて、本当に魅力的なモノでなければ安くても誰も買ってくれないという分野は既に登場しています。これからはこの傾向が広まるといわれていて、その時代をアイリスオーヤマの大山健太郎会長はユーザーインと名付けておられます。
これから来るだろうそのような時代にモノづくりの私たちはどう対応するかについて、花を例にして考えてみたいと思います。
花を作って売ろうとするとき、安くすればもっと売れるだろうと、ある人は大量生産を考えるでしょう。
一方で、珍しい花を栽培すればもっと高く売れると考える人や、これまでにない新種を開発すれば儲かると考える人もいるでしょう。ただしそのようなことは凄い技術力やお金がかかるので、やはり生産性を上げるなどのコストダウンで「100本まとめていくら」の花づくりをする人は多いのではないかと思います。
しかしモノを作ることにだけ目を向けていると見えない大切なことがあります。たった1本の花でも、綺麗にラッピングしてリボンを結べば、手作りの心がこもった商品ができます。品種開発は極一握りの人にしかできないことですが、花屋さんは全国にたくさんあります。
これまでのお客様は流通業者であったかもしれませんが、本当に使うお客様を見て、製品を機能品質でなく、魅力品質で考えることにチャレンジすることが大切だと考えています。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp