4月16日から21日までドイツ・ハノーバーで行われた世界最大級の国際産業見本市ハノーバーメッセ。制御盤関連企業のブースでは、制御盤の設計・製造自動化につながる製品・技術が多く展示されていた。EVや再生可能エネルギー、自動化など、電気の活躍の場がさらに広がるなか、それを支える制御盤の需要も増加すると予測し、ヨーロッパでは盤業界を挙げて設計・製造の自動化環境の整備が進んでいる。
制御盤の設計・製造を自動化する上で、その基本となる設計データの充実と利活用の範囲拡大は不可欠となる。電気CADメーカーのEPLANではその土台強化に向けて、EPLANと各制御機器メーカーのエンジニアリングソフトや、電線加工やマーキング等の加工機との連携などオープンなコラボレーション強化をはじめ、プラントの流体と機械、電気・配線設計のデータをつないで、よりリアルなデジタルツインの構築の様子などを紹介していた。
また制御機器メーカーによるEPLANへの製品データの提供も積極的に行われおり、自社製品がEPLAN Data Portalへのデータ登録が済んでいて設計時に使えることを打ち出したステッカーを目立つところに貼っているブースもあり、データ活用基盤が整備されていることがうかがえた。
設計データを製造工程で活用するためのソリューションも多く展示。制御盤の筐体メーカーのリタールは、設計データを受け取って、電線供給からカット、皮剥き、フェルール端子の圧着加工まで全自動で行う加工機の最新製品を打ち出していたほか、電線加工機のKOMAXも全自動ワイヤーハーネス製造装置の新製品を展示していた。
端子台メーカーは、プッシュイン式の進化技術を展示して配線作業の効率化を提案。フエニックス・コンタクトはPush-X、ワゴはレバー操作式、ワイドミュラーはSnap-inなど、工具がいらず、電線を穴に差し込んでより効率的に結線できる技術を紹介。また配線作業の自動化についても、フエニックス・コンタクトは自動化・効率化をテーマとしたブースを別途設け、組端子台の全自動製造装置や手作業の効率化のための作業ガイド付き作業台、電線加工機やマーキング装置、作業工具などを展示。ワイドミュラーは協働ロボットによる電線加工とマーキング、配線作業の自動化デモ機を設置し、自動化の道を示していた。
ヨーロッパの共通認識として、脱炭素の動きやロシア・ウクライナ問題によってエネルギー不足の深刻化や再生可能エネルギーへの電力シフト、EVの普及が急ピッチで進んでおり、それにともなって社会の電化、電気の利用範囲が拡大し、それをコントロールするための制御盤の必要数が増え、それに対応する必要に迫られている。その一方で、各国は緩やかな少子化が進み、直近ではコロナ禍による移民の母国への帰国からのUターンが遅れていて、社会のあらゆる場面で人手不足が深刻化している。その対策として自動化需要に期待される向きは強く、制御盤の需要増も期待されており、制御盤製造における生産性向上は差し迫った状態にある。
こうした動きを社会的問題として捉え、制御盤業界は生産性向上に向けて連携を深め、一方で各社独自の製品開発を加速させているのが実態だ。