端子台、コネクタなどの配線接続機器は、人手不足や人件費高騰などを背景に省人・省工数化を図れる機器のひとつとして注目が集まっている。同時に、情報通信技術を核としたデジタル化の進展で、それを裏方で支える配線接続機器は大きな役割を果たしている。
関連団体では配線接続機器の技術ガイドを作成し、省力効果と信頼性の高い配線接続機器の普及に取り組んでいる
一方で、製品の素材になる金属や樹脂関係の不足や価格高騰が顕著で、納期とコスト対応に苦労しているメーカーも多い。
IoTや5G、自動車の電動化など取り巻く市場環境は非常に明るく、当分拡大基調が期待できる。
配線接続機器は、機器・装置の配線をつないで電気や信号をなど伝える重要な役割を果たしており、用途も微小電流から高容量電流まで幅広い。
5GやIoTなどの情報通信のインフラ投資や、自動車のEV関連投資、さらには人手不足を背景にした自動化・省人化投資の拡大などで、需要は大きく拡大している。
こうした旺盛な需要の一方で、原材料の調達難から大幅な納期遅延が発生。加えて円安や海外の政情不安も絡んで原材料価格が大幅に上昇し、メーカー各社は価格改定を進めている。納期も一時よりは短くなってきているものの、依然入手に時間のかかっている材料もあり、機種によってまだら模様の状況だ。受注残も減少気味となっているが、まだ高水準の受注が継続しており、各メーカーの増産体制は継続しているところが多い。
配線接続機器の用途は、電子・電気機械から自動車・電車などの輸送機器、受配電設備など、電気が使われるあらゆる分野に広がっている。昨今のデジタル化の進展は、配線接続機器の用途をさらに加速させている。
この一方で、配線接続作業の省力化・省工数化を求める声も強まっている。人手不足が深刻になっていることに加え、熟練作業者の減少もあり、未熟練者でも簡単、かつ安定した品質で作業ができるような製品開発を求める声も多い。そこで、配線接続器機器では、省配線化や省工数につながる製品への関心が高まっている。
配線接続機器のうち、端子台は小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDC(直流)の高耐圧化などを目指した開発が著しい。端子台の配線作業の省力化ニーズは人手不足も加わりますます高まっている。
端子台の配線接続方法は、日本で主流になっているねじ式、欧米で主流になっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)という大きく2つの方式がある。まだねじ式の採用が多いものの、人手不足から配線接続作業の省力化対策として、スプリング式の採用が増えている。
日本ではねじを使った丸型圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いというのが大きな理由だ。スプリング式はケーブルを挿し込むだけで配線作業が完了し、ネジ締め作業や締める加減も不要など、省力化効果は大きい。まだ配線作業が不慣れな初心者であっても簡単に作業ができることから、熟練作業者でなくても配線技術習得に時間がかからず、懸念されていた振動での配線の緩みや経年での信頼性に対する心配も使用実績を重ねることで払拭され、採用加速への追い風になっている。
そして、このスプリング式もここにきて大きく変化している。そのひとつが配線工具不要で配線作業を可能にしつつある。
従来、専用の配線工具を使用する方法が多かったが、ケーブルのサイズによっては使い分けが必要なこともあり、配線作業の省力化につながる一方で、煩わしさもあった。
配線工具には、配線ケーブルの先にフェルールを装着するための工具もある。しかし、そのフェルールも最近は使用しないで配線する方法も登場している。ケーブルをそのまま端子台に差し込むことで配線作業が完了することから、一段と省工数化が図れる。配線がきちんと接続できているかを確かめることができるインジケータ表示も可能になっているものもあり、作業ミスなど接続不良の防止にもつながることで、接続信頼性はさらに高まることになる。このようにスプリング式の接続方法は日進月歩で改良が進んで、使いやすさが増している。
同時に用途も、従来スプリング式は制御用途や小電流用途を中心に普及が進んでいたが、ここ数年、電磁開閉器や配線ブレーカーに加え、操作用スイッチやスイッチグ電源など、従来はネジ式接続が使用されていた機器でもスプリング式端子台の採用が増えつつある。さらに、大電流用でのスプリング式端子台のラインアップも急速に拡充している。1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200㎟という太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。
大電流用途では、丸型圧着端子台(丸端)で配線後の増し締めをするという習慣が定着しているが、スプリング式の接続信頼性への評価の高まりに加え、人手不足も重なり、徐々にこの習慣がなくなりつつある。増し締めが不要になることで、トータルコスト面もスプリング式の優位性が高くなってきており、市場に大きな変化が出始めている。日本では公共建設物や送配電分野ではネジ式が多く使用されているが、法的な規制が徐々に見直され、国土交通省発行の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)の令和4年(22年)度版に、「ねじなし端子」が制御盤に使用する器具の端子として追加された。これによりスプリング端子を国交省公認で公共案件にも使用できることになった。
最近は欧州を中心に、プリント基板に外部端子を使用しないで直接給電するための大電流対応コネクタの要求が高まっている。大容量の電源、インバータ、サーボアンプなどでプリント基板に直接給電することで、大幅な小型化と電力損失の低減が図れ、省エネ化につながるというものだ。コネクタの採用で電線のハーネス化による組立性やボード交換などのメンテナンス性向上が図れるという効果も見込める。
最近発売されて注目されている端子台として、配線を端子側面から挿入するプッシュイン端子台で、設置高さ方向のスペースに余裕のない場合でも配線が容易に行える。丸端などのネジ式配線接続式と方向が同じのため、ネジ式端子台からの切り替えも進めやすく、側面配線のため、ケーブルダクトまでの配線曲げも不要になるなどの利点がある。
もう一つ注目されている端子台が、配線方式にプッシュイン式を採用して配線工数と端子スペースの削減を図るとともに、取り外し可能な足を取り付けることで、縦横兼用で使用できるコネクタ端子台だ。足を外した場合は縦向きに、足を付けたままの場合は横向けにと、1台で縦向き・横向きの両方に対応可能になる。在庫を削減でき、盤の小型化にも貢献する。
配線接続機器の中で新発想の配線方法として注目されているのがケーブルエントリーシステムだ。コントロールユニットや制御盤の筐体面から取り出す多数のケーブル、ホース、コンジット類を集約し、専用工具不要で簡単に組み立てができるもの。コネクタや圧着端子が付いた状態のケーブルを、分割式フレームと分割形ケーブルグロメットを使用することで、素早く簡単にアッセンブリすることができる。保護等級も最大IP68に対応できる。EMC対策にもつながることで、評価を高めている。
用途も工作機械、鉄道、建機、などに加え、人体に影響を及ぼす食品機械や医薬製造機械などにも広がりつつある。
配線接続機器の需要は産業機器から民生機器、車載、社会インフラまで需要の裾野が非常に広いことから、安定した市場を形成している。今後、自動配線設計システムや自動配線作業システムなどの普及が進むことが見込まれることから、こうした流れに対応した配線接続機器の開発が予想される。
普及へ技術資料発行
電線接続方式の多様化が進む中で、配線の接続作業は作業量の大半を占める制御盤組立工程の中での作業を効率化することが求められている。
日本電機工業会(JEMA)と日本電気制御機器工業会(NECA)は共同で、制御盤内の配線接続の技術と現状をまとめた「制御盤内の電線接続方式~端子・締付具の課題と対応~」と題する資料を発行した。
この資料では,制御盤内の電線接続に使用される主な接続方式について整理し,制御盤のライフサイクルを踏まえた,電線接続における課題及び現状の対応策についてまとめている。
電線接続方式には多くの種類があり、新しい種類の電線接続方式を具備した制御盤内機器の販売を増えてきていることから、ねじ式・スプリング式など制御盤内の電線接続に使われる主要な接続方式について整理しながら、制御盤のライフサイクルを踏まえた電線接続における課題と対応策について解説している。
とくに、電線接続方式別の選び方では、それぞれの方式に特徴があり、設計者の意図する目的、コスト、作業性、入手性、メンテナンス性などの観点もあり、設計から廃棄までのライフサイクルを考慮。とりわけ部品点数の増加や方式による作業項目の違い、両方式の混在、マークチューブの選定、内線と外線サイズの違い、接続の信頼性の確保などに注意が必要としている。
さらに電線の種類も、端末処理をしていないより線や可とう線等と、丸形端子、Y形端子、フェルール端子など圧着端子で処理をしたものなど多岐にわたる。
◆主な内容
▽電線接続の種類
電線や締付具の種類、電線端末処理と締付具との組合せ、関連規格について
▽電線接続方式の選定
制御盤のライフサイクルと電線接続、電線接続方法の多様化による部品種類の増加、作業時間・作業工数、電線接続方式の混在、マークチューブの選択、内線と外線サイズへの適応、接続における信頼性の確保など。
この資料は、NECAのWebサイトから誰でも無料でダウンロードして閲覧できる。