ついに「ものづくり白書(製造基盤白書)」から「Connected Indsutries (コネクテッド・インダストリーズ)」が消えた。2023年版ものづくり白書は全268ページあるが、そこには「コネクテッド・インダストリーズ」の進捗状況に言及している部分がないどころか、その単語すらどこにも見当たらない。さらに、経産省のWEBサイトでは、コネクテッド・インダストリーズはアーキテクチャ政策の過去の政策に追いやられている。やはりというか、こうなることは予想していたが、日本の産業はどこを目指して進んでいるのか。
コネクテッド・インダストリーズは2017年にその概念が提唱され、日本の産業が目指すべき姿として「データを介して、機械、技術、人など様々なものがつながることで、新たな付加価値創出と社会課題の解決を目指す産業のあり方」を示した。ドイツの「インダストリー4.0」や中国の「中国製造2025」といった国を挙げた産業振興策に対抗するという意味合いもあり、発表当時は、ようやく国が主導的立場を発揮してゴールを設定し、官民あげて進む体制がはじまると心躍ったものだ。
しかし結局はあやふやなまま尻すぼみになり、日本の産業政策はいつも通りの行き当たりばったり、風見鶏状態に戻った。翻ってドイツや中国は着々と製造業の強化を進め、国際競争力を高めている。本来は日本がそうなるためにコネクテッド・インダストリーズを立ち上げて取り組んできたのではなかったのかと悲しくなる。
毎年4月に行われているドイツの国際産業見本市ハノーバー・メッセでは、必ずその時々のドイツ首相が会場を表敬訪問し、その年のパートナーカントリーの首相と一緒に主要ブースを巡り、それがオープニングイベントになっている。今年もドイツのオラフ首相がインドネシアのジョコ首相をともなって会場を練り歩いていた。昨年は半導体がメガトレンドになり、SEMICONに岸田首相が参加したが、果たして半導体ブームがひと段落している今年はどうなるか。また11月には国際ロボット展もあり、どういう姿勢を示すか見ものである。政治家も国もパフォーマンスはいらない。やるなら地に足をつけて真面目に産業振興に取り組むことを期待する。