富士経済は、製造業向けロボットとなるFAロボットとその構成部材の世界市場調査をまとめ、FAロボットの世界市場は2022年の1兆4179億円から2027年にはその1.5倍となる2兆1718億円まで拡大する見通しを示した。
同調査によると、FAロボット市場は、中国やヨーロッパを中心にEV関連の設備投資が好調で、車載バッテリー向けなどが伸びて、2022年の世界市場は前年比11.5%増の1兆4179億円となった。また物流業界や三品業界(食品・医薬品・化粧品業界)は自動化ニーズが高く、スカラロボットや垂直多関節ロボット、協働ロボットなどが伸びて市場拡大が続くとしている。
用途別では、組立・搬送系は、2022年は14%増の8340億円。スマートフォン関連の設備投資減少のため、スカラロボットや小型垂直多関節ロボットなど、エレクトロニクス関連でニーズの高いロボットが伸び悩んだ。一方でEVやバッテリ関連需要の盛り上がりを背景に、可搬重量の大きな垂直多関節ロボットの需要が高まった。今後はスマートフォン関連の需要増加は期待薄となるため、市場の伸びは小幅にとどまる。それでも中長期的には小型垂直多関節ロボットなどの需要は底堅く、10%以上の成長率が続き、2027年には1兆3744億円(64.8%増)まで拡大する見通し。
溶接・塗装系は、2022年は8.0%増の3995億円となり、中国や米国のEV関連の設備投資が増加して拡大したが、中長期的にはEV化による部品点数の減少によって設備投資は鈍り、市場の伸びは緩やかになり、2027年には5298億円と予測。
クリーン搬送系は、2022年は1313億円(10.2%増)。ウエハー搬送ロボットはスマートフォン市場の縮小を受けて設備投資が低調で、ガラス基板搬送ロボットもディスプレイの生産能力が需要を上回る状況が続いて横ばい。今後も状況は大きく変わらないが、米国で半導体産業への設備投資が期待されて堅調な伸びをする見通しで、2027年には1671億円になる見通し。
アクチュエーター系は、2022年は532億円(5.3%増)。中国のスマートフォン製造関連の設備投資抑制やロックダウンの影響はあったが、車載や半導体製造関連、産業機器などで需要が増加。2023年以降は電動スライダーや単軸ロボットの需要増が見込まれ、2027年には1005億円になるとしている
協働ロボットも本格普及へ
協働ロボットについては、2022年は28.3%増の1132億円。製品の認知度や活用方法がユーザーに浸透してきたことや主要メーカーが提案に力を入れたことによって大幅な実績増となった。特に可搬重量20kg超のタイプが各社から揃い、パレタイジング用途で人からの置き換えが進んだ。今後はハンドリングや検査工程に加え、安全柵を用いないパレタイジングなどの用途も普及が加速し、中国メーカーなど参入メーカーの増加による選択肢の広がり、人件費の高騰や自動化・省人化ニーズが高まっているASEANなどでの伸びも期待され、2027年には2022年の2.6倍となる2889億円まで拡大すると予想している。
また注目技術として、リニア搬送システム市場が挙げられる。リニアモーターとスライダー、コントローラーなどで構成され、生産ラインの中でワークを高速・高精度に搬送する新たな搬送技術で、2022年は高速・高精度、低発塵、レイアウトの自由度の高さ、変更容易性などで自動車部品や車載バッテリー、電子部品の組み立て工程や搬送工程への普及が進んだ。また多品種少量生産の多い三品業界でも需要増につながっている。