気象関連サービスのウェザーニュース(WN社)は、気象観測機器の開発製造パートナーとしてオムロンと手を組み、簡単に設置でき、1台で温度や湿度、風向き、雨量など7つの要素を観測できるIoTセンサを開発した。農業や建築、物流など、これまで大手企業が中心だった気象観測データの利活用について、中小企業がもっと手軽に行えるようにサービスを拡大していくと、ここまでは一般向けのニュース。
FA業界目線だとまた違った見方になる。今回オムロンは開発製造を担い、言ってみれば受託の設計製造の一種。OEMやODM、EMS、DMSに類し、彼らのビジネスとしては異質だ。また気象関連サービス最大手のWN社と言えど、今回の開発製品が短期間で何十万台と売れていくイメージは想像しにくい。スモールスタートで始まるチャレンジであり、こうしたプロジェクトを大手のFA、電機メーカーが側面から支援をするというのも、あまり見かけない。
しかし近年、オムロンは顧客との共創やソリューションに力を入れている。そこに注目すると、見え方はまた変わる。今回の件は、高信頼性で質の高いハードウェアが必要なWN社の要望に対し、オムロンはコラボレーションという形で手を組み、WN社の気象の知見と、自分たちの強みであるセンサとものづくり力を掛け合わせ、要求に合ったハードウェアを作り上げた。これは単なる受託製造の枠組みを超え、コア技術を活かしたソリューションと言ってもよい。まさに、いま彼らが志向しているビジネスの形に違いない。
日本のFA企業が生き残り、強みを発揮できるのはニッチな市場、カスタムや小規模ビジネスを拾いまくることだ。昔からよく言われていることだが、今回のオムロンのケースでさらにその思いを強くした。人手不足の日本は規模の経済争いでは分が悪い。標準化やロビー活動も苦手分野だ。しかし面倒や手間がかかるカスタムは得意であり、高い技術力も持っている。カスタムは、裏を返せば、標準品では満足できない人が抱える課題。多様化する時代、カスタムニーズは強まりこそすれ、弱まることはない。そこを解決するのも立派なソリューションだ。小さな一つひとつの案件で利益を取り、それを積み重ねる。点を集めて面となる。それこそが日本の活きる道だ。