これまで分業生産は工業の発展に大きな貢献をしてきました。自動車が今のように私たちの足として普及したのは、ヘンリー・フォードがT型フォードの生産において、標準化を進め分業生産のコンベアシステムを作ったからといわれています。
当時、自動車は優秀なエンジニアが作るものであったのが、標準化された作業を分業することで誰もが生産に参加することができるようになり、組み立てスピードは一気に500倍になったといわれています。すなわち分業生産はスピードを上げ、量を増やすための手段として大きな成果を上げてきたということです。
しかし、マーケットが細分化し縮小する環境下では、高スピードのコンベア生産では在庫が増えてしまい、そのメリットが生かせないことが増えています。その結果、日本国内での組み立てでは、生産はセル生産方式になってきています。たくさんの人で一つの商品をたくさん作るのではなく、たくさんの人でたくさんの種類の商品を一つずつ作るということですね。
しかし、これからの中小製造業が目指す「マーケット密着の高付加価値商品の生産」を考えると、セル生産だけでは心もとないと思います。新たなレベルの分業生産を創造してセル生産との連携で新しい日本のモノづくりを築きたいと考えます。
新しい分業生産は量ではなく、質のために行います。最高のモノづくりをする職人さんの一連の作業を10工程などに分解して、10人が1工程ずつ覚えて担当することで安定生産できるようにします。1人のすごい職人さんに頼ることをしないで、ノウハウの流出も防ぐ職人レベルの品質の製品を量産するのです。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp